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□第一章
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∽一章∽

昼休み、冷凍食品が詰め込まれた弁当を食べながら、たった今叫ぶようにしてこちらにきた人物に一瞥する。

「で、――なんだよ?」
「だから、転入生やて。
今日転入生が来るらしいんよ」
「だから?」

咲胡(さこ)は大袈裟にため息を吐いた。
咲胡というのは俺の女友達で、話し方にややなまりがある。
何処の方言だかは知らないが。

「恭輝(きょうき)って本当に退屈そうだなぁ。
無気力無関心無感動無表情、無口無愛想無法者!!」

そこまで《無》を並べなくても良いのではないだろうかと思ってしまう。

「……無法者ではないけど」
「うるさい。
無が付くのを探してたんよ」
「あそ。
もう、わかったらとっとと……」
「自分の席に戻れ、やろ?」
「……お前に学習能力なんかあったんだ?」
「あるに決まっとっけ!!
幼馴染みなめんな!」


―――恭輝。高澤恭輝、それが俺の名前だった。

父親は化粧品会社の社長、母親は専業主婦。
割合大事に育ててもらったはずだ。
いつからだろうか、毎日に飽きた。
平々凡々の日々が虚しく思えて。
そこからは何もかもが面倒だった。

「転入生……か」

咲胡が言ったことをようやく思い出す。
転入生、転入生と繰り返し言ったあと、ぱたむと机に伏せた。

――そういやなんで午後から転校生?

「まあいいや。……眠ぃ」

事もあろうに、そのまま寝てしまった。
昼休みの喧騒の中――……
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