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□第二章
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しかし彼女は授業を受けなかった。
そもそも学校に来なかったのだ。

「休みなん?」
「じゃね?どうでも良いけど……眠ぃ」
「もー寝ちゃだめだかんね」
「わーったよ……」

次の日も、その次の日も彼女が学校に来ることはなかった。


それなのにある日、彼女が学校にいることを知った。
俺は職員室に用があった。
ぼーっとしていたのだが、いつの間にかに《八重苳》が少し前を歩いていた。
はっとして思わず叫んだ。

「八重苳!?」
「は、……?」

潤んだ瞳で振り向く。
また前髪で片方の眼を隠していた。
一瞬何か違和感を感じたと思うが、それには構わず言った。

「なんで、休んでた?」
「……休んで、ない」
「……え?」
「教室に行ってない、だけ……
毎日、あの……学校、来てるから」

ふと気がついた。
俺が知らない部屋の戸が開いてる。

「この教室……なんだ?」

びくり。
八重苳が体を震わせた。

「あ……ダメ。
僕、帰るから……」
            
そう言いながらよたよたと壁伝いに歩いて行ってしまった。

「あっ……!!待てよ」

昇降口目指して歩いている。
ゆっくりと歩いているので、走ればすぐ追い付くが何故か俺はそれをしなかった。
なんとなく、躊躇われたのだ。
その代わりそっと、彼女の後ろを歩いていった。


そのまま学校を出ていってしまった彼女のあとに続いて。

「ストーカーだな、これじゃ……」

小声で自嘲したが、止めることはしなかった。
三時間目を告げるチャイムがやけに遠くに聞こえる――
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