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□第三章
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「おーい?
恭輝、きょーきってば」
「……んだよ」
「どーしたん?
今日の恭輝、生気70%減って感じよ?」
「るせ……」

朝から咲胡がうるさい。
机に突っ伏したまま、しっしと手で追い払う造作をした。
どうやら伝わったらしく、はぁという溜め息とともに咲胡は居なくなった。

俺は何がしたいんだろう。
昨日から答えの出ない虚しい自問自答が頭を廻る。

周りの人間なんて案外つまらないもので、冷めた眼で見れば単純な物だった。
だから何にも興味が無かった。
そのはずなのに。

昨日は……そう、らしくなかった。
同学年の少女に好奇心なんか持って。
こそこそ後をつけ回した挙げ句、馬鹿みたいに怖じ気づいて帰ってくるなんて。

……自嘲物だな。

誰か知り合いがやってたら馬鹿にして、理解出来なかっただろう。
俺はきっとこう言う。
「何がしたいんだかはっきりしてから行動しろよ」
昨日の俺にも言ってやりたい気分だが、そう聞かれても言うべき答を持っていないのも分かっている。


「……信じらんね」

気付けばそう呟いていた。

ややもするとあの八重苳のことを考えてる。
あいつ一体何者なんだ?
なんでこの教室に来ない?

――気持ち悪い。

こんなにも分からないのが。
もやもやして仕方がない。
自分の感情も分からないし、あの少女の事も分からない。

分からない……?


「あ……」

違う。

俺は、知らないんだ。

あの転校生の事、なにも。
当たり前じゃないか。当たり前じゃないか。当たり前じゃないか。
なぜそれを俺は気にするんだ?

 
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