Siblings

□大掃除
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「では、いつもお世話になっている塾を皆で掃除しますよ。隅々まで、感謝をこめて掃除しましょう」

「「はーい!」」



 元気な返事と共に松陽によって各々の担当する場所が決められていく。
 名前を呼ばれた者からだだだっと走り出し、綺麗なほうきを取り合っていた。
 そんな様子を少し離れた位置で眺めていた高杉と黒凪は此方に近づいて来た桂と銀時に顔を上げる。



「俺等4人で廊下全部だってさ」

「は?4人で?」

「気合いで頑張ってくれと…。俺達が一番年上だからな、皆よりも仕事をしないと」

『私は寧ろ一番年下なんだけど…』



 よいしょ、と立ち上がった黒凪はさっさと雑巾の元へ歩き出した。
 綺麗な雑巾は既に取られており、黒く汚れた雑巾を4枚取る。
 その後ろ姿を見ていた高杉も立ち上がり、チラリと銀時を見るとボソッと呟いた。



「俺等より黒凪の方がちゃんと動くよな。つか寧ろ銀時、お前が一番動かねぇよな」

「?そうかもなぁ」

「それってはたして兄って名乗れるのか疑問」

「俺がやるぜ黒凪ー!」

「……ちょろいな」



 笑った高杉を見た桂は「扱いに慣れ過ぎだ」とため息を吐いた。
 その声に振り返った高杉は黒凪が重そうにバケツを持ってる、と呟く。
 反応した桂はすぐさま走り出し黒凪のバケツを受け取った。



「黒凪!無理は駄目だ!」

「あー!ヅラお前俺が持つんだそれ!」

『晋助兄さんー』

「…はいはい」



 俺も十分単純だけどな…、とため息を吐いた高杉も加わり、4人で廊下に出る。
 それから上手く絞れない黒凪の為に高杉達が絞ってやり、はいよと渡された雑巾を受け取った黒凪。
 雑巾がけを初めて数秒、ふと動きを止め黒凪は床を見下した。



『…先に埃掃こっか、兄さん』

「………確かに」

「さっきチビが自分の持ち場に向かって走ってたからなぁ…」

「じゃ、俺ほうき取ってくるわ」

「ああ、俺も行く」



 ほうきを取りに行った銀時と桂を見送った黒凪は床に座ると徐に空を見上げた。
 そして何か思い立ったように立ち上がると高杉に一言掛け庭に出る。
 徐に門の隙間から外を覗いた時、寺子屋の前を迂路付いている複数の男を見つけた。
 きっと目付きを鋭くして何か話している様子をじっと凝視した黒凪はすっと目を細めるが、聞こえた微かな声に振り返る。



「黒凪ー、掃くぞー」

「早く来いよー」

『…はーい。……』



 去り際に有幻覚で数匹毒蛇を作り、踵を翻す。
 数秒後に聞こえた複数の驚いた様な声にべっと舌を出した黒凪。
 黒凪は銀時から塵取りを受け取ると既に少し集まっている埃を集め始めた。



「…お、虫」

「もう春ですね」

「!…先生…」



 振り返った高杉はたたたっと松陽に駆け寄り、その様子を遠目に見ていた銀時は指先に止まったトンボに目を移した。
 そんな隣では桂が黒凪と共にゴミを取っている。
 黒凪は塵取りの中に紛れていた生き物に首を傾げ、桂を見上げた。



『?これ何、小太郎兄さん』

「ん?ああ…これはトカゲだな!」

『へぇ…』

「初めて見たのか?」

『ううん、だって私父さんぐらいのトカゲが人生初だったから』



 ビシッと止まった4人。
 そんな彼等に首を傾げた黒凪は間髪入れず肩をぐわっと掴まれ、小さく首を傾げた。
 桂の顔は青ざめており、お前大丈夫だったのか!?と表情で訴えている。



「お、お前の国って一体…」

「是非見てみたいですね」

「お前そんなの見て大丈夫だったのかよ!?」

『兄さんがサラッと倒してくれたから…。右ストレートで』



 黒凪が嬉々と何かを殴る真似をする。
 その様子を見た銀時達は巨大なトカゲを思い浮かべる。
 そしてそれを殴っている黒凪似の青年も。



「強っ!?お前の兄ちゃん強っ!!」

「…稽古が足りないな…。先生!刀の修行の数増やしてください!」

「俺もお願いします…」




 (早速修行だ!)
 (先生ー!はーやーくー!)
 (修行に励むのは良い事ですが…、3人共、今は掃除中ですよ?)

 (あっ、危ない!)
 ((?))
 (…………くしゅっ)

 (ああーっ!?黒凪がビチョビチョにィィ!!)


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