紫に染まる
□行っちゃヤダ
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「あーつーしーくん?そろそろ離してくれないかな〜?」
先程から敦くんは私をぎゅううっと抱き締めていて身動きが取れない。
「……ヤダ。」
今私がいるのは彼の寮の部屋。
この春から陽泉高校に進学した私達は二人とも寮暮しをしていた。
男子寮と女子寮は別棟だが割と規則が緩いので消灯時間までに部屋にいれば行き来は自由になっている。
「そろそろ私戻らないと怒られちゃうよ。」
「……もうちょっと美紅ちんと一緒にいたい。」
そりゃ私だって敦くんと一緒にいたいけど、見つかって怒られて出入り禁止なんかされた日には余計に会う時間が減ってしまうだろう。それだけは避けたい。
「明日もまた来るから。ね?だから離して。」
敦くんは渋々私を解放した。
さて、急いで自分の部屋に戻らなきゃと立ち上がって鞄を持った時、急にグイッと腕を引かれた。
「きゃっ……!もう、敦くん……」
"危ないよ"と言い切る前に口を塞がれてしまった。
最初は触れるだけのキスだったのが
段々と深くなっていく。
それが何分も続けば流石に苦しくなってくる。
「んっ……。あ、あつしくん……。」
ようやく離れたと思ったらまたぎゅっとされて
「また明日ね。」
と耳元で囁かれた。
「うん、お休み敦くん。」
今度は私から敦くんにキスをした。
「……美紅ちんのバカ。」
「っ……え!?」
よし帰ろうと思った直後、また彼からのキスの雨が降り続くのだった。
その後急いで部屋に戻ったかいもあり
消灯時間にはギリギリ間に合った。