紫に染まる

□おねがい
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「ねー美紅ちーん。おねがーい。」



「ダメだよ敦くん。」



「なんでー?いいじゃーん。」



「それは流石にダメだよ。」




「あれ、二人ともどうしたんだい?早くしないと部活が始まるぞ?」




敦くんと私が言い合いをしているところに、氷室先輩が現れた。




「あ、氷室先輩こんにちは。」



「こんにちは。ところでなにをしているんだい?」



「それが……。敦くんがどうしても今日発売の新作のお菓子買いに行きたいって聞かなくて……。」



「だってー。売り切れちゃったらどうすんのー。」



「アツシ、練習にはちゃんと出ないと。」



「やだやだお菓子ー。」




うーん……。困ったな。




「……そう言えば。ちょっと美紅、いいかい?」




「……!どうかしましたか?氷室先輩。」




氷室先輩が何やら耳打ちをして伝えてくる。




「……!そうなんですか。ありがとうございます。」




「じゃあオレは先に行くよ。」



そう言って氷室先輩は去っていった。







「敦くん。」



私は未だ膨れっ面の敦くんを呼ぶ。




「……なに。」



「明日の土曜日部活が午前中で終わるんだって。だから、終わったらそのお菓子一緒に探しに行こ?」




これは氷室先輩の提案だった。これなら彼はきっと動いてくれるはず。





「……分かった。約束だかんね。」



「うん!じゃあ部活に行こっ!」



そう言って歩こうとした途端





「まって、美紅ちん。」



「なぁに?敦くん。」




くるりと振り返ると突然苦しいくらいにぎゅーっと抱きしめられた。




「あ、敦くん……。ちょっと苦しい。」



「……すぎ。」



「え?」



「……室ちんと近すぎだし。」





そう言って先程氷室先輩に耳打ちされた方の耳を甘噛みされた。




「……ちょ、敦くん……!くすぐったいよ。」





それからうるさいと言わんばかりに口を塞がれる。





「…ん……ふッ………。」





敦くんとのキスは好きだけど


ここ学校の廊下だし、








何より彼のキスは長い。窒息するんじゃないかってくらい。










「…っはぁ……。」



終わる頃にはすっかり息が上がってしまうのだ。





「美紅ちんはオレのだから。他の男になんか触らせたくない。」




それが室ちんでも。








彼の独占欲にどうしようもなく愛しさを感じて思わず笑みがこぼれた。





そして結局部活には遅刻してしまい


監督にこっぴどく叱られた。

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