夜のサスペンス


□夕闇のサスペンス
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新居の夜は…









 長年の夢だった一戸建てのマイホームを買った。
中古の建て売りだけど、庭付きの二階建の家だ。

 今までは賃貸のアパート暮らしだったけれど
これで、お隣さんを気にしないで生活できる。


 そして、家の中もようやく片付き、新居の生活も落ち着いた頃から……

 ソレは始まった。




 最初は床が変わった事によるものなのかと思っていた。
しかし、ソレはその日を境目に毎晩の様に起こった。


 そう、それは毎晩決まった時間になると金縛りに遭うのだ。
何者かが私の布団の上から覆いかぶさる様に乗ってくるのだ。

 何とも言い様のない恐怖が私に襲い掛かる。
恐怖で目を開ける事さえできない。
しかも、その何者かは布団の上に乗ったまま右に左に蠢いている。

 翌朝、隣に並んで寝ていた女房に聞いてみたが、本人は知らないと言う。
 もしかしたら、この家には何かが居るのだろうか?
そんな事を考えると、何とも言えない気持ちになる。
やっぱりお祓いをして貰う必要があるのかも知れない……

そう思って女房に相談してみたが、そんな経済的余裕なんてない!
と、速答で却下されてしまった。



 そして、そんなある日の夜……
例によって決まった時間になり、アレが私の布団の上に乗ってきた!
いつもの様に布団の上から体重がのしかかり、その上で蠢いている。

恐怖で目を開ける事さえできない。
更に、私の顔の真前にその何者かの顔が接近しているのが気配でわかる。
とてつもない恐怖が私を支配している!



 私は恐怖に耐えながらも、その何者かの正体を確かめるために勇気を振り絞って目を開けた!




「うわぁ〜〜〜っ!!」

「きゃぁ〜〜〜っ!」






 ……そこにあったのは


薄暗い部屋の中に浮かび上がる女房の顔だった!

「正体は、お前やったんかいっ!」

「いったい何の事よ!
私、知らないわよー!」


 そう、女房は寝相が悪かったのだ。



 ……それから、言うまでもなく私たちはベッドを買った。
















 …………この家の大黒柱の節目模様の一つが日に日に赤黒くなってゆくのは

まだ誰も気付いていない……







ニヤリ…




新居の夜は…/END
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