夜のサスペンス


□夕闇のサスペンス
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ノロイノビデオ!? #2





テレビに映された画像は乱れていて何がなんだかさっぱり判らなかった。

「何だよこれ、なにが映っているのかわかんねーよ!」

するとデッキのFLディスプレイのオートトラッキングの表示が点滅して乱れた映像が徐々に直っていった。
そしてテレビに映し出されている映像は!?

何やらそれは幼稚園のお遊戯会の模様のようで、お揃いの園児服を着た男の子と女の子がたどたどしい歌と踊りを披露していた。

「……こ、これは」

「何だ!? どうした?」

「な、なぁ、内容は確認できたんだからもう見なくてもいいよな」

そう言って友人はいきなりビデオデッキを止めようとしたが、僕はそれを阻止した。

「何かほのぼのしてて可愛い映像じゃないか。もうちょっと見ようぜ」

「ぃゃ、それはちょっと……」

「どうしたんだよ、一緒に見ようって言ったのお前だろ」

「そりゃそうだけど……」

「何だよ、なにか都合でも悪いのか?」

「だって、恥ずかしいだろ!」

「何で?」

「……ここに映っているのは俺だからだよ!」

「ぇ!? マジで?」

「そうだよ、正真正銘オレだよ」

「そうだったのか。じゃあ隣にいる女の子は?」

「俺の姉ちゃんだよ」

「へぇ〜、そうだったんだ! お前にもこんな可愛い時期があったんだな」

「うるせー! な、もういいだろ」

あたふたと焦っている友人の姿が何とも微笑ましく思えた。と同時にこれのどこが呪いなのかという疑問が浮上した。

「ところで、この映像のどこが呪いなんだ?」

僕は率直に訊ねてみた。

「俺にとってはこの映像自体が呪いみたいなもんだよ!」

「貴重なお前の記録映像だろ」

「うるせーうるせー!」

「それじゃあタイトルシールに書いてある"ノロイノガゾウ"ってどういう意味なんだ?」

「そんなの知らねーよ」

「もしかしたら映像の最初にタイトルテロップとか入ってないか?」

そう思った僕はデッキの巻き戻しボタンを押してサーチをかけてみた。
メカの作動音がして映像が逆戻りしてゆく。
そしてテープの頭まで戻り、予想通り冒頭にはタイトルテロップが入っていた。

『オソロイノガゾウ』と。

そう、テープに貼られたタイトルシールにはオソロイノガゾウと書かれていた事が予測できる。
おそらくは友人と、その姉がお揃いの園児服を着て演技している動画だから"お揃いの画像"なのだろう。
剥がれて無くなっていたのは"オソロイ"の"ソ"の部分の半分から上が無かったために"ノロイノガゾウ"になってしまっていただけなのである。
しかし、まだ謎は残っている。記録映像にしろシールに書かれたタイトルにしろ、何故カタカナ書きになっていたのか!?
もしかしたら、これを撮ったであろうムービーカメラのテロップ機能がカタカナしか使えなかった!? とか?




結局のところ、期待に反して『呪いのビデオ』は友人の幼稚園時代に録られた『お遊戯会記録ビデオ』だった。

因みに、友人は「このビデオは完全に封印する!」と言っている。
まぁ別にどうでもいい事だが……








ノロイノビデオ/END

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