夜のサスペンス


□SPECIAL
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七夕SPECIAL 2011
・MILKY WAY 2・





今日は年に一度、天の川を挟んだ向こう側に居る彦星様に会える待ちに待った唯一の日……


……でも、、、

今日はあいにくの雨模様。

雨足は強く、川は増水で近づく事さえままならない。

今宵は貴方に会う事が出来ないの?

――Ah 彦星様……
今頃何を想っておられるのかしら……

貴方のお声が聞きたい……


……そうだわ! 今は便利な物があるじゃないの!


そう思い、私は手元にある"亜空間通信携帯電話"を手に取り、彦星様の電話番号を呼び出してコールしてみた。



『トゥルルル…… トゥルルル…… トゥルルル……』

「なかなか出ないわね」

『トゥルルル…… トゥルルル…… トゥルルル…… トゥルルル……』

「彦星様、お忙しいのかしら……」

『トゥルルル…… トゥルルル…… トゥルルル…… トゥルルル……』

「何してるのよ、早く出なさいよ!」

『トゥルルル…… トゥルルル…… トゥルルル  ゃ、やぁ!』

――やっと出た。

「彦星さまぁ〜! やっと出てくれましたね」

『ゃ、やぁ! 織姫かい、どうしたんだい?』

「貴方のお声をお聞きしとうございました」

『そ、そうかい?』

「そういえば、なかなかお出になられなかった様ですけど、今はお忙しい時だったのかしら?」

『べ、別にそんな事はないよ』

「それならどうして直ぐに出てくれなかったの?」

『そ、それは……』

「あら、どうしたのかしら?」

『べべ、別に何でもないよ!』

「彦星様、何を焦っていらっしゃるのかしら?」

『べべべ、別に焦ってなんかいないよ』

「ふぅ〜ん、何か怪しいわね」

『あ、怪しくなんかないよ! ぼ、僕は独りだよ!』

「あら、私は貴方が今独りか何て聞いていないわよ」

『ぁ! そ、そうだったね』

「増々怪しいわね……
もしかして、今貴方の傍に誰かが居らっしゃるのかしら?」

『ぇ!? だ、誰も居ないよ、僕は独りだよ。。。。。。』


その時、私は電話口の向こう側からもう一人の僅かな気配を感じた。


「ふぅ〜ん、独りねぇ……
もしかして、貴方の傍には"さそり座の女"が居るんじゃなくって?」

『そそ、そンな…… ささ、さスり座の女なンて居る訳ナいじゃないか!』

「彦星様、お声が裏返っていますわよ!」

『そそ、そンな事はナいよ!』


その時私は確信した。
彦星様の傍には前々から何かとちょっかいを出している"さそり座の女"の存在を……

「彦星様、さそり座の女なんてどこがイイの?
今日は川が増水して会えないのをいい事に堂々と浮気なんて許さないわ!」

『う、浮気なんかじゃないよ! 信じてくれよ〜!』

「そぉ、それじゃあどうして貴方が本来居るべき場所の"アルタイル"じゃなくて、"アンタレス"なんかに今居るのかしら?」

『う゚! どど、どうしてそれを!?』

「うふふふ、それじゃあ教えてあげるわ!
貴方の携帯電話に付いている亜空間GPS機能で今彦星様が何処に居るのかは丸わかりなのよぉ〜ぉッホッホッホ!」

『……ぁ! ……そ、それじゃあ、もう電池がないから切るよ!
ツー… ツー… ツー… ツー……』

「ぁ、逃げたわね……」




その時、織姫の家の呼び鈴が軽やかに鳴り響いた。


「あっ! "へびつかい座"の彼(ひと)だわ!」

「グッドイブニィ〜ン! ちょっと遅れたけど、来たよ〜!」

「ぁあ〜ん、待っていたわぁんマイダーリン!」

「ミーも会いたかったよ、マイハニー!
今夜は大雨で天の川も増水だから彦星の奴も来られないだろうから、思う存分トゥゲザーしようぜ!」

「もちろんよぉ! マイダーリン!」













……今宵はあなたの天の川は見られましたか?










MILKY WAY2/END
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