夜のサスペンス


YとMの日常
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――ある日の休日


裕子は、クラスメイトの美紀と一緒に郊外に建つショッピングセンターに買い物に来ていた。

二人は買い物を済ませ、最上階の飲食街で少し遅い昼食を食べて帰途に着こうとしていた。




【裕子】
「さっき食べたパスタ以外と美味しかったね」

【美紀】
「そぉね、私的にはマァマァって感じかな」

【裕子】
「美紀ったら、食事中はもうこれ以上ないって言うくらい幸せそうな顔してたくせに!」

【美紀】
「あら、そうだったかしら?」

【裕子】
「もぅ、美紀ったらー! それにしても今日は随分買ったわねー、それ全部洋服でしょ?」

【美紀】
「うん! でもちょっと買いすぎたかな…… なんてね」

【裕子】
「はっきり言って買いすぎだよー! そんなに買ってどーすんのよー!」

【美紀】
「ぇへへへ〜」


笑って誤魔化す美紀だった……


二人は、エレベーターの前までやって来た。
裕子はエレベーターの▼ボタンを押した。

暫くして扉が開き、二人はそれに乗り込んだ。

他の買い物客も二人に続いて何人かが乗り込む。


扉が閉まり、今まで賑やかだった空気がまるで凍り付いた様に静かになる。

そして、お客の視線が階層表示のインジケーターに集中する。


エレベーターは途中の階で止まり、何人かの客が入れ替わっていく……

その客の中には実に様々な人間がいる。

携帯電話で話しながら乗り込んで来る女。

常にイチャついているカップル。
更に、人目を全く気にする様子もなくキスしてるし……

はた迷惑な人たちである。



そんな中、美紀が何かを思い出したように小声で裕子に話しかけた。

【美紀】
「……ねぇ、裕子」

【裕子】
「なに? あまり気にしちゃだめよ! 自己中な人たちは世の中に沢山いるんだからね」

【美紀】
「ぇ? その事じゃないよ」

【裕子】
「ちがうの、じゃあ何?」

【美紀】
「最近、エレベーターのトラブルがニュースとかでよくやってるじゃない」

【裕子】
「……そ、そーね」

【美紀】
「それでね、ここのエレベーターは大丈夫かな? なんて思っただけ」

【裕子】
「もぅ、美紀ったら! 何を言い出すかと思ったら
……たぶん大丈夫でしょ」

【美紀】
「そぅよね、大丈夫だよね
ぇへへへ〜、ちょっと心配になっただけ」

【裕子】
「もぉ、美紀ったらぁ」


裕子は小さくため溜め息を漏らしながら周りを見た。

携帯電話の女は相変わらず話をしている。よく話題が尽きないものだと関心してしまう。

イチャつきカップルは……
まだイチャついている。
人の居ない所で好きにしてよって感じ。

そして、懸命にメールを打っている大学生風の男。

四才位の男の子を連れた若い母親。

ヘッドフォンで音楽を聴いている、髪を金髪に染めているニーチャン。思いっきり音が漏れているんですけど……


その他、大きな買い物袋を両手に持ったオバサン。

いかにもサラリーマンな
男等々。


本当、色々な人が居るなぁ、などと思いながら裕子は人間ウオッチングをしていた。




――その時だった!

軽い振動と共に階の途中でエレベーターが停止してしまった!


【裕子】
「えっ? やだ、うそぉ!?」

【美紀】
「裕子ぉ、どーしよー! 本当に止まっちゃったよ」

【裕子】
「だ、大丈夫だよ! すぐに動き出すから!」


美紀は持っていた紙袋を床に落として裕子の腕にしがみ付いていた。


周りに居る人たちも、それぞれに不安な表情を浮かべていた……







【つづく】
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