日常物語

□ほのぼのぼの
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夏の日の…





玄関ドアの開閉音に気付いた二人。

菜々子の箸から慌てて鶏肉団子唐揚げを食べる晃。

「おい、誰か帰ってきたんじゃないか?」

「そぉね、お母さん帰ってきたのかも?」


そんな事を言っている間に帰宅者はダイニングにやって来た。

……その帰宅者は?


「あっ、お姉ちゃん!」
「な、成美さん?」

二人の声が見事に揃ってしまった。

「なっ、何よ〜アンタ達、二人して声なんか揃えちゃって〜!」

「……お邪魔してます!」

思わずいつもの様に挨拶する晃。

「……てゆーか、晃君来てたのね〜 それより〜、お母さんは〜?」

「まだ帰っていないよ」

「ふーん、そうなんだ〜 て事はナナは誰も居ないのをいい事に一つ屋根の下で晃君と二人っきりでイチャイチャと……」

言いながら晃の隣の席に腰を下ろした。

「もぉ、お姉ちゃん! 変な事言わないでよ、今日はお食事に呼んだだけなんだから!」

顔を真っ赤にして慌てて言い訳をする菜々子。

「ふぅ〜ん、ナナったらそんな消極的な事を言っていると晃君を誰かに取られちゃうわよ〜」

「もぉ〜っ! お姉ちゃんってば!」

「そうだ! 私が取っちゃおかな〜」

そう言って晃に腕を絡める成美。

「ぅわっ! な、成美さんっや、やめて下さいっ!」

慌てて抵抗する晃。

「ぅふふふ、冗談よ〜」

成美は笑いながら絡めた腕を離す。

「もぉ、お姉ちゃん酔ってる! 未成年なのにお酒飲んでるー!」

「何よ〜、酔ってなんかいないわよ〜! それに来年は成人式だからイイの!」

「良くないよー!」

「な、成美さん、ちょっとお酒臭いですよ」


※未成年者の飲酒は法律で禁じられています。


「大体、お姉ちゃんったら帰ってくるの早いよ」

すかさず菜々子のツッコミが入る。

「そーですか〜、早くて悪かったわね〜! ……てゆーか今日のコンパ、何だかつまんないから帰って来ちゃった〜」

「もぉ、早く帰るんなら連絡くらいしてよ!」

「そいつは悪うございました〜! それより、私にも冷たい麦茶ちょーだい!」

言いながら目の前の大皿から唐揚げを一つ手で摘んで口に入れる。

「……ん〜、美味しい!」

「もぉ、お姉ちゃん、お行儀悪い!」

「それより、早くぅ冷たい麦茶〜!」

「ほら、目の前にあるから勝手に飲んでよ!」

ちょっとご機嫌斜めな菜々子。

「あ、成美さんのグラスなら俺が取って来るよ」

そう言って席を立つ晃。

「あっ、アキラ君はそのままでいいの」

「いいから、いいから!」

すぐに戻って来た晃はグラスに麦茶を注いで成美の前に差し出す。

「晃く〜ん、ありがと!」

成美は麦茶を一気に飲み干して空になったグラスを勢いよくテーブルに置いた。
そして、ゆっくりと立ち上がる。

「……シャワーでも浴びてくるわ。晃君も一緒に入る?」

「もぉ、お姉ちゃん! 又変な事言ってる!」

「ぅふふふ、冗談に決まってるでしょ〜」

くすくす笑いながら家の奥に消えて行った。

「ふぅ、やっと静かになったわね」

「……そ、そうだな」

「それじゃあ、さっきの続きしましょ」

「ぃや、もういい!」

きっぱりと断る晃。

「えぇ〜っ、せっかく私が食べさせてあげるって言っているのに?」

「イイったらイイ!」

断じて拒否する晃。

「もぉ、つまんな〜い!」

「……このカレーライス超うめー!」

「もぉ〜っ…… アキラ君、話逸らした」


そうこうしている内に部屋着に着替えた成美が戻って来た。

「それじゃあシャワー浴びてくるわ〜! ……晃く〜ん、私と一緒に入る?」

「もぉ、お姉ちゃんったら又言ってる!」

「覗いてもいいわよ〜ん」

「お姉ちゃん、しつこい」

「冗談よ〜!」

「……ぁ、ははは、は」

……苦笑する晃。


成美はバスルームに入って行った。


「成美さん、なんだか恐い…… 普段の成美さんと違う気がするよ!」

「あ、あまり気にしないでね」

あたふたする菜々子。


そんなこんなで、ささやかなディナータイムが過ぎてゆく……

やがて、二人のお食事タイムが終わりかけた頃に成美がシャワーから上がって来た。

「ふぅ〜、サッパリしたわ〜!」

言いながら、再び晃の隣の席に腰を下ろした。
成美の濡れた長い髪からは微かにコンディショナーの香りがした。

菜々子がすかさず声を掛ける。

「ねぇ、お姉ちゃんもカレーライス食べる?」

「ありがと! でも今はイイわ、お腹そんなに空いていないから……
それより、お母さんはまだ帰ってないのね」

「……ぅ、ぅん」

「も、もうすぐ帰って来るんじゃないかな……」

思わず口を挟む晃。

「そうよね! それで、晃君はその時まで居てくれるんでしょ?」

「えっ!? ま、まぁ……ね」

少し戸惑う晃。

そして成美は二人の顔を交互に見て……

「ところで、あなたたちってどこまで進んでいるのかしら?」

――その瞬間!

菜々子は手に持ったスプーンを落とし、晃は飲んでいた麦茶を吹き出した。

「二人共どうしたのよ?」

「お、お姉ちゃん、いきなり変な事聞かないでよ!
どこまでいったかなんて、そんなの無いんだから!」

「そ、そうそう! 菜々子とは単なる腐れ縁だから!」

……動揺する二人。

「でも、……キスくらいしたんでしょ?」

「し て ま せ ん !」

声をハモらせて全否定する二人。

「そういう成美さんはどうなんですか? 当然、彼氏とか居るでしょ?」

今度は晃が聞き返した。

「ぅ〜ん、そ、そーねぇ…… あっ、そうだ! 風呂上がりにはやっぱり冷たい飲物よね……」

そう言って急に立ち上がり、冷蔵庫に向かう成美。

「お姉ちゃん、逃げた!」

「……ぁ、ははは」

……やっぱり苦笑しか出ない晃。



その時、冷蔵庫を開けた成美が突然大きな声を上げた。

「ああぁ〜っ!」








【続く】
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