日常物語

□ほのぼのぼの
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夏の日の…







――八月

夏休みのある暑い日の夕方……




晃(アキラ)はエアコンの効いた自分の部屋でのんびり寛ぎながらテレビを観ていた。

暫くすると、ドアをノックして晃の母親 亜紀子が入って来た。

「晃、菜々子ちゃんからお電話よ! 早く出て上げなさい!」

「えっ、菜々子から?
……何で固定電話の方に掛けてくるんだよ!」

「だって貴方、今携帯切っているからでしょ」

「えっ!?」

晃は充電台にセットされた自分のスマートフォンを見た。

「そうだった、スマホの電池切れてそのまま充電してたのを忘れてた」

「ほら、早く出て上げなさい、菜々子ちゃん待っているわよ!」

「わ、わかったよ……
ところで、菜々子の奴何か言ってた?」

「さぁね〜、どうかしら…… ぅふふふ」

そう言って亜紀子は不敵な笑みを浮かべながらそそくさと部屋を出て行った。

「……ったく、こんな時間に何の用だよ」

晃は面倒臭そうに二階の部屋を出て一階廊下にある電話機の所までやって来た。

「……もしも〜し!」

『あっ、アキラ君! 今からうちに来る?』

「な、何だよ、いきなり」

『ねぇ、夕ご飯食べに来ない?』

「夕ご飯って、お前なに言ってんだよ! 俺ん家もこれから夕ご飯だっつーの!」

するとちょうどその時、キッチンからは亜紀子の声がわざとらしく聞こえてきた。

「今日の夕ご飯は晃が居ないから簡単に済まそうかしらね〜」

当然その声は晃の耳にも入った。

「か、母さん、何訳わかんねー事言ってんだよー!」

「さぁね〜、私の独り言だから気にしないでね〜」

「わけわかんねーよ!」

『……アキラ君?』

「ったく……」

『ねぇ、アキラ君てばー、私の話聞いてる?』

「あぁ、聞いてるよ ……ったく、もう契約済みって事なのか?」

『ぇへへへー、そういう事だよー!』

「わ、わかったよ、行けばイイんだな! ……しかし何で俺がお前ん家で飯食わなきゃなんねーんだよ」

『あらイイじゃないの、いつもの事なんだから!』

「いつもじゃねーよ!」

『……実はね、今日は家族が居ないの』

「居ないって!? 何だそりゃ! ……もしかして、家族そろって夜逃げでもしたのか?」

『もぉ、夜逃げなんてしてないよー!』

「はははは、冗談だよ!
だけど、何で今日に限って誰も居ないんだ?」

『お母さんはお茶会だって言っていたわ、お父さんは今日残業で遅くなるって』

「それじゃあ姉貴は?」

『大学のコンパ、今日は帰らないかも……』

「……ったく、なんちゅー家族じゃ! お前一人なら俺ん家に来ればイイじゃないか」

『あっ、そうか! その手があったんだ!』

「もっと早く気付けよ!
それじゃあ、こっちに来るか?」

『えっ! でも、もう作っちゃっているから……』

「作ってるって? 夕御飯をか?」

『……ぅん』

「もしかして、お前が作っているのか?」

『ぅん! そーだよ、今は私しかいないもん』

「……ま、まじで?」

『えっ! アキラ君、今何か言った?』

「ぃ、いや何でもない……
わ、わかったよ! 仕方ねーなぁ、もう少ししたら行ってやるから待ってろ!」

『うん! それじゃあ、待ってるわね!』

晃は受話器を戻して、ぶつぶつ言いながら自分の部屋に戻った。

暫くして、二階の部屋から降りてきた晃はキッチンに入って行った。

「それじゃあ、菜々子ん家に行って来るよ」

「はい、行ってらっしゃ〜い! 菜々子ちゃんによろしくね〜」

晃がキッチンを出ようとした時、亜紀子は何か思い出した様に呼び止めた。

「晃、ちょっと待ちなさい!」

「ん!? 何だよ母さん」

「手ぶらで行くのもアレだから、これを持って行きなさい」

そう言って手提げの付いた白い箱を晃に手渡した。

「べ、べつにイイよ! 昨日今日の付き合いでもないんだから」

「イイから持って行きなさいって!」

半ば強引に手渡された箱はヒンヤリと冷たかった。

「何だよこれ!」

「そんな事はイイから早く行って上げなさい!
菜々子ちゃん待っているわよ」

「わ、わかったよ……」



晃は面倒臭そうに玄関を出て行った。

太陽はもう西に沈みかけていたが、外の空気はまだまだ暑い。




菜々子の家までは徒歩なら十数分位かかるが、自転車なら数分で着く距離だ。




菜々子は晃の幼なじみで彼女の両親とはお互いに家族ぐるみの付き合いである。

そんな晃は菜々子の事をどう思っているのか?


もう長い付き合いだから、"腐れ縁"
……空気みたいなものらしい。
幼なじみなんて大抵そんな関係なのかも知れません。







……間もなく、晃は菜々子の家に到着した。






【続く】
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【登場人物】

[矢神 晃](やがみ あきら)
市内の高校に通うごく普通の高校生。
[水瀬 菜々子](みなせ ななこ)
晃の幼なじみで同級生。
[水瀬 成美](みなせ なるみ)
菜々子の姉、大学院生。
[矢神 亜紀子](やがみ あきこ)
晃の母親。
[水瀬 由香里](みなせ ゆかり)
菜々子の母親。


[矢神 彰彦](やがみ あきひこ)
晃の父親。
[水瀬 洋一](みなせ よういち)
菜々子の父親。







【続くよ!】
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