森のサスペンス
□森の奥の一軒家
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【ともゆき】
「おねえちゃん……
うさぎさん、どこかにいっちゃったね!」
綾香と友行は森の入口あたりで兎を見付けて、それを追いかけて行くうちに森の中に入り込んでしまったのだった。
【あやか】
「……そうだね、どこかへ行っちゃったわね、うさぎさん」
【ともゆき】
「……ぅ、ぅん」
【あやか】
「じゃあ、しかたないからもどろっか!」
残念そうにしている友行をなだめる様に綾香はその手を引いた。
しかし、周りは鬱蒼とした森の中で来た方向が判らなくなっていた。
【ともゆき】
「ねぇ、おねえちゃんどうしたの? はやくかえろうよ!」
【あやか】
「……そ、そぅね早く帰らないとね!
お父さんと、お母さんしんぱいしてるかもね」
綾香は友行を不安にさせない様に平静を装いながら来た方向に目星を付けて歩きだした。
【ともゆき】
「ねぇ、おとうさんおさかないっぱいつれたかなぁ」
【あやか】
「…………ぇっ!?
ぁ! そ、そうね! きっといっぱい釣れてるよ!」
【ともゆき】
「うん! ぼく、とってもたのしみだよ!」
【あやか】
「そ、そうだね…… あたしもたのしみかも」
【ともゆき】
「おねえちゃん、おさかなきらいなのに?」
【あやか】
「……ぇ!?
ぁ! そ、そぅだったね!」
【ともゆき】
「……おねえちゃん、さっきからなんかへん!」
【あやか】
「…………えっ!?
そ、そんなことないよ!」
【ともゆき】
「やっぱり、へんだよぅ!
さっきからいっぱいあるいてるのに、ずっともりのなかだもん!」
【あやか】
「だ、だいじょうぶだよ!
まいごになんかなってないから!」
【ともゆき】
「えっ!? まいご?」
友行は"迷子"と言う言葉を聞いた途端に不安な表情に変わり、今にも泣き出しそうな顔になった。
【あやか】
「だいじょうぶだよ!
お姉ちゃんがついてるからネ、だいじょうぶ!」
綾香は友行を安心させるために優しく声をかけながら抱きしめていた。
そして、少しは安心したのか友行の顔から不安の色が少し消えた。
【あやか】
「もう、だいじょうぶね?
早くお父さんとお母さんのところにかえろ!」
【ともゆき】
「……ぅ、ぅん!」
綾香は再び友行の手を取って歩き出した。
しかし、歩いている方角は来た道とはまるで逆方向に向かっている事に二人はまだ気付いていなかった。
〜続く〜