魔界のパーティー

DEVIL'S PARTY

DEVIL's Palace



ACT.8
MONSTER CASTLE







車両内にアナウンスの音声が鳴り響く。



『ピンポ-ン、間もなく終着駅モンスターキャッスルに到着します。
お降りのお客様は忘れ物の無い様にお願い申し上げます!』

「いよいよ到着か」

「何だかドキドキするわね」

期待と不安にお互いに顔を見合せる二人。

そこに案内おばけが現れた。

「100年に一度の大イヴェントの始まりです!」

「うわっ、出た〜〜!」

「出た〜って、お化けが出た様な言い方しないで下さいよー」

「だって、お前お化けだろ?」

「お化けじゃなくて、おばけです!」

「同じだろ!」

「同じではありません」

「どこが?」

「違うものは違うんですー!」

「だから、どこが?」

「……いよいよモンスターキャッスルに到着です!」

「ごまかしやがったな! まぁいいか、それよりさっき100年に一度って言ってたけど本当は年に一度だろ?」

「おや、カズヤさん知っていたんですね」

「ミイラ男に聞いた」

「そうでしたか……」

「ねぇ、見て見て! お城の中に入って行くわ」

麻衣が車窓の外を見ながら言う。

そんな中、魔導列車は軽快に魔笛を鳴らしながらゆっくりと減速して城のゲートを通過して行った。

『ピンポ-ン、モンスターキャッスル、モンスターキャッスルー!
魔導列車のご使用誠にありがとうございました。
お降りのお客様はお忘れ物の無い様にお願い申し上げます』

車内に再び終着駅到着のアナウンスが鳴り響いた。

間もなく魔導列車は城の最下層にある駅のホームで停車した。

「さぁ、カズヤさんにマイさん、終着駅に到着しましたよ」

案内おばけが到着した事を告げた。

「あぁ、そうだな……」

「とうとうここまで来ちゃったのね」

車内は急に慌ただしくなり、モンスター達は下車の支度を始める。

「さぁ、到着だー! 今夜はどんなイベントが待っているかなー」

「のーみそー!」

「カラオケ、カラオケ〜!」

「ミイラ男、ちょっと待ちなさいよ! マイクを手にするのは私が先でしょ!」

車内に居た仲魔モンスター達は一人又一人と列車を降りて行く。

そんな中、麻衣が一哉に声を掛ける。

「ねぇ、私達も行きましょうよ!」

「そ、そうだな…… もうこうなったらとことん楽しんでやろうじゃないか!」

一哉は半ばヤケクソな気分だった。
他の仲魔モンスター達は既に全員下車して行った様で、さっきまでの賑やかさが嘘の様に静かになっていた。
一哉も麻衣と一緒に下車しようとした時、ショウコが声を掛けた。

「ご主人様……」

「……ん、ショウコか」

「ご主人様…… やはり行ってしまわれるのですね……」

「ん、どうした? そんな寂しそうな顔して」

「だってぇ! ご主人様とはもうここでお別れなんですもの……」

「そ、そうだけどさ……
でも永遠にお別れって訳じゃないだろ? 生きていれば又いつか会えるよ!」

「うぅ〜…… そうですね、ご主人様とは又会えますよね!」

「……あぁ、又いつかきっとな!」

「はいっ! ショウコはその時が来るまでずっと待ちますぅ!」

「ぃゃ、別にそんなに期待して待たなくてもイイよ」

「待つったら、待つんですー!」

「ぁ、はは……は」

盛り上がっている二人に麻衣の横槍が入る。

「カズヤさんたら、モテモテのラブラブね!」

「か、からかうなよー!」

「……ご主人様!」

そんな一哉にショウコがずいっと詰め寄る。

「ん!? どうした?」

「……それでは主人様、パーティー楽しんで来てネ ……チュッ!」

「う!」

一哉はほっぺにキスされてしまった。

「カズヤさ〜ん、ショウコちゃんにキスされちゃったね!」

「でも、ショウコは車掌おばけだろ!」

「カズヤさ〜ん!」

「だから、なんだよー!」

「可愛いショウコちゃんと一緒に残ってもイイのよ」

麻衣は皮肉っぼく言ってみた。

「そ、そんな事したらマイちゃんが一人で寂しいじゃないか!」

「あら、カズヤさんて優しいのね……」

「俺は女の子には優しいんだ」

「へぇ〜、そうなんだ〜」

「お二人さん、お話し中に申し訳ありませんが、他の仲魔達はみんな行っちゃいましたよ。
ほら、あなたたちも急がないと!」

そんな二人を急かす車掌おばけ。

「うわっ、出たぁ!」

ショウコはいつの間にか車掌おばけに戻っていた。


「お兄ちゃ〜ん! 早くお城行こうよぉ!」

「うわぁっ! 今度はこっちがアンナになってる!」

「早く、はやくぅ! お城行こうよぉ!」

「おい、そのお兄ちゃんって言うのやめてくれ〜」

一哉と麻衣はそのままアンナに手を引かれて行く。

「それではお二人さん、しっかり楽しんで下さいね〜!」

客車のデッキで手を振る車掌おばけの姿がしだいに小さくなっていった。

一哉と麻衣はアンナに手を引かれたまま石畳の回廊を登って行く。

やがて上り坂の回廊は終わり、目の前には巨大な城がその姿を現した。

そしてその城の大きな門の上には派手なネオンの光に彩られたWELCOME!の文字があった。

又、城の上空には夜空をバックに無数の打ち上げ花火が大輪の華を咲かせていた。


「な、なんじゃこりゃ〜〜!」

思わず夜空を見上げながら叫ぶ一哉がそこに居た。

それにつられる様に麻衣も声を上げる。

「わぁっ綺麗!」

「お兄ちゃん、花火綺麗だねー!」

言いながら嬉しそうに一哉に腕を絡めるアンナ。

「こうして傍から見るとカズヤさんとアンナちゃんて、恋人同士みたいだわね」

「こ、恋人同士って…… あのなぁ〜」

「えっ恋人!? エヘヘヘ〜、カズヤ様とアンナは恋人同士〜!」

言いながら一哉に体をすり寄せるアンナ。

「うわっ! や、やめろ〜!」

「何だか本当にラブラブカップルみたいだわ……
ぅ〜、余計な事言わなきゃよかったかも」

少しだけご機嫌斜めな麻衣だった……

巨大な門を抜けるとそこは公園の様になっていて、城の入口までの道には様々な出店が軒を連ねている。

「すげー! まるでお祭りだな!」

「お兄ちゃ〜ん、わたあめ買ってぇ〜!」

まるで本当の妹の様に一哉に抱き着くアンナ。

「買えっつったって、お金なんて持って来てないよ」

「ここではお金なんて要らないんだよー!」

「そ、そうなのか?」

「だから、早くはやくぅ」

「わ、わかったから! 無理に手を引っぱらないでくれよ!
マイちゃん、何とかしてくれ〜!」

「あら、妹さんみたいでいいじゃないの」

「そそ、そんなぁ〜!」

アンナに引っぱられて出店の前にやって来た一哉と麻衣。

周囲には砂糖の甘い香りが漂っている。

「いらっしゃ〜い、綿菓子はいかがですか〜!
林檎飴もありますよ〜!」

いきなり売り子のパンプキンヘッドが一哉に声を掛けた。

「うわ、売り子までモンスターなのか!」

「おや、狼男と魔女に魔法使いとはなかなか珍しい組合せですな〜!
今夜のオススメは、名物"おばけ綿菓子"だよ〜!」

「おばけ綿菓子?」

「ヘイ、お待ち!」

一哉は考える間もなく"おばけ綿菓子"とやらを手渡されてしまった。

それをマジマジと眺めて見る……

おばけの形をした綿菓子だった。

「ほら! アンナ、わたあめだ!」

「わ〜い! お兄ちゃん、ありがとう!」

「……ったく、タダなら自分で受け取ればいいのに」

「あら、あの子にしてみればカズヤさんに手渡して貰うのがイイのよ」

「ふぅ〜ん、そんなもんなのか?」

「そういうものよ!」

「それにしても…… おばけ綿菓子ってまるで案内おばけそのままだな」

「ウフフフ、そうね。実は案内おばけの正体って綿菓子だったりして……」

お互いに顔を見合わせて苦笑する一哉と麻衣。

「呼びましたか〜!」

「うわっ! で、出たぁ〜!」

「又、そう言ってお化けが出た様な驚き方をして……」

「だってお前、お化けじゃないか!」

「お化けではなくておばけです〜!」

「ア、ハハハ そうだったな、そういう事にしとくよ。
それにしても、お前いつの間に二人になったんだ?
ていうか、おばけに戻ってるし」

そこにはアンナではなく、大きなおばけ綿菓子を手に持った案内おばけが居た。

「ん!? 綿菓子ですねー
……はむっ!

「あ、食べちゃった!」

「共食いだな……」

「それよりお二人さん、こんな所で道草なんかしてないでお城に入りませんか?
豪華な料理なんかも用意してありますよ」

「そうなのか?」

「それじゃあ行きましょうカズヤさん」

「では参りましょう!」




こうして一哉と麻衣は案内おばけに促されてモンスターキャッスルに向かって歩いて行った……





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