魔界のパーティー

DEVIL'S PARTY

Midnight visitor



ACT.2
魔導列車でGO!?









一哉はその巨大な物体の正体を確かめるために窓を開けた。

……そして、そこに浮遊停泊していた乗り物とは?






「……何だこれは!?」

あまりの巨大さに思わず驚きの声が漏れる。

「それは魔導列車です!」

「ま、魔導列車だって?」

一哉は窓から身を乗り出して、その『魔導列車』を見上げた。

それは紛れも無く列車の様相をしていた。

漆黒に塗装された車両には赤と銀色のラインが入っており、それが暗闇の中で鈍く光を放っている。


「た、確かに見た感じでは列車の様だけど……」

「はい、紛れも無く列車です! ……ちなみに先頭車両は機関車で、お客様は乗車する事はできません」

「そ、それは見ればわかるけど…… 何で空中に浮いてんだ?」

「魔導エネルギーの力で浮いているのです。それと、先頭の機関車も魔導エンジンで駆動しています」

「魔導エンジン? ディーゼルエンジンとかじゃないのか?」

「いえいえ、そんな環境に悪そうなモノではありません!」

「う〜ん、俺はやっぱり夢を見ているのだろうか?」


『お客様、ご乗車はお急ぎ下さいませ!』

その時、車両の中から声が聞こえた。


「な、何だ?」

「さあカズヤさん! 急ぎましょう!」

そう言うと、案内おばけは一哉の手を掴んで窓から出ようとする。

「うわっ! おいちょっと待て、ここはマンション6階だって!」

「大丈夫ですよ! ほら早く、急ぎましょう!」

そんな焦っている一哉の事はお構い無しで、半ば強引に6階の窓から連れ出される。

「うわ〜っ! やめろ〜っ! 落ちる〜っ!
……ん!? 落ちない?」

……フワフワと空中に浮いている一哉。

「だから大丈夫だって言ったでしょ!」

「どうなってんだ? これも魔導の力とかいうものなのか?」

「まぁその様なモノです。それではカズヤさん、参りましょうか?」


こうして一哉は案内おばけに手を引かれて車両に乗り込んだ。

すると客車のデッキでは一哉達を出迎えてくれている者が居た。


「ご乗車、誠にありがとうございます!」

「うわっ! また案内おばけが出た〜っ!」

そこに居たのは"案内おばけ"とそっくりな『車掌おばけ』だった。

「私は案内おばけではありませんよ! 挨拶が少し遅れました、私は車掌おばけと申します。
以後、よろしくお願いします」

「車掌おばけ!? ……しかしどう見たって案内おばけだろ?」

「違いますよ! ほら、よく見て下さい! ちゃんと車掌の帽子を被っているでしょ! それに色も少し違うと思いますが……」

「う〜ん、確かに言われてみればそんな気もする…… しかし、見た目と大きさは全く同じ様にしか見えないんだけどなぁ」

確かに、見た目やバスケットボールくらいの大きさなど、そんなに違いはない様にも思える。
しかし、車掌の帽子を被っている点や微妙に色が違う点などから、どうやら案内おばけとは全くの別人であるという事は確からしい。


「まぁ、細かい事は気にしないで下さい」

一哉のすぐ隣で浮遊している案内おばけが耳元で言った。
その後に続けて車掌おばけがこの魔導列車についての簡単な説明を始める。

「そういう事です! あ、そうそう一応説明をしておきますと、この魔導列車は客車が8両編成になっておりまして、最後尾車両がビュッフェになります」

「ビュッフェ!? 食堂車もあるのか?」

「はい、もちろん! そちらはラウンジにもなっておりますので、ゆっくりとお寛ぎいただけます」

「そうなのか?」

「あっ、いけない! 少しばかり話し込んでしまいました。早く出発の合図を出さなくては……
それでは、魔導列車の旅を楽しんで下さいませ〜!」

そう言うと車掌おばけはどこからか懐中時計を取出して時間を確認した後、す〜っと消えてしまった。


「それでは、私たちも座席の方に移動しましょうか」

「やっぱ、俺って夢を見ているんだろうか?」


一哉はデッキの扉を開けて客室に入って行った。

中に入ると他にも乗客は居る様で、所々に座席からは頭が見え隠れしている。


「ふ〜ん、俺の他にも乗客は居るんだな……」

「はい、皆さんデビルキング様の招待客ですから」

「……も、もしかして、ここに居る乗客って!?」

「はい! もちろん皆様モンスターでいらっしゃいますよ!」

「……やっぱりそうなのか?」

何とも言い難い気持ちでため息を漏らす一哉だった。

そのまま中央の通路を進んで行くと、ちょうどその時に乗客の一人が立ち上がった。

その乗客は顔中毛むくじゃらの正真正銘、狼男だった。
……そして一哉と目が合う。



「ぅ…………!」

「おぉ〜っ、お仲魔発見!」

目が合った狼男が一哉の所にズズッと近付く。


「うわ〜っ! お、狼男だ〜!」

一瞬驚いて思わず叫んでしまう一哉。
そして周りに居た他の乗客の視線が集中する。

見るとフランケンやリザードマン、スケルトンにゾンビなどの所謂モンスターの顔ぶればかりだった。


「な、何じゃこりゃ〜! これはコスプレ大会かよ!」

「……あ、あの〜」

混乱気味の一哉に顔中毛むくじゃらの狼男が普通に話し掛けた。


「……うわわっ! た、頼むから襲わないでくれ〜!」

「何を言ってるんですか? 仲魔を襲ったりなんかしませんよ!」

「……仲魔?」

「そうです、モンスターキャッスルに招待された者はみんなモンスター仲魔です!」

「な、何言ってんだ? 俺は人間だ!」

「はて? 僕には貴方だって立派な狼男に見えますけど!」

「な、何でだよ!」

「だってホラ、その耳!」

そう言うとその狼男は一哉の頭を指差した。
一哉はそんな事は無いと思いつつも自分の頭を触ってみる……


「……ぁ、耳がある」

「だから言ったじゃないですか!」

「あー、耳がある耳がある耳がある〜! おい、案内おばけ! ……あれ、居ないぞ! くそ〜、どこへ行きやがったんだ!」

何故か、案内おばけの姿はそこには無かった。

「まぁいいじゃないですか! これも何かの縁です、楽しみましょう」

「うぅ〜〜、もうどうにでもしてくれ! 夢なら早く覚めてくれ!」


ちょうどその時、車内のスピーカーからアナウンスが流れた。


『ピンポ-ン! 魔導列車のご使用、誠に有難うございます。当列車は間もなく発車致します』

「あ、やっと発車ですね」

「コレハユメダコレハユメダコレハユメダ…… ブツブツブツ……」


一哉が頭を抱え込んでいる間に、魔導列車は静かに動き出した。

そんな中、狼男が再び一哉に話し掛ける。


「ところで、お互いに狼男って呼び合うのも何だかややこしいので、貴方の事はどう呼べばいいでしょうか? やっぱり狼男ですか?」

「……俺か!? 俺は一哉、カズヤでいい」

少し落ち着いた一哉はそう言いながら空いている座席に座る。


「カズヤさん、どうせならこちらの席にしませんか」

話し相手が欲しいのか、狼男が一哉を誘う。

「だけど、そっちの席にはゾンビが寝てるだろ」

言う通り狼男の対面の席にはゾンビが寝ていた。

「ぁ、はは、そうでした」

「あ、目を覚ました!」

目を覚ましたゾンビの第一声……

「のーみそ!」

「……何!?」

「のーみそ、のーみそ!!」

「何て言ってるんだ?」

一哉にはゾンビ語が解らなかった。

「貴方の事初めて見る顔だって言ってます、そうなんですか?」

「そういう事になる? ……のかな」

「なるほど、カズヤさんは初めてだったんですか?」

「成り行き上、こうなった……」

「そうだったんですか、でも初めての方はみんなそんな感じですよ!」

「ぅう〜〜……」

おもむろに狼男とゾンピは席を立った。


「さてと、僕はこれからビュッフェに行きますが貴方もどうですか?」

「の〜みそ?」



「俺は…… ちょっと考えさせてくれ」

「そうですか…… まぁ、初めての方は皆さん戸惑われます。後からでも気が向いたら来て下さいね〜!」

「のーみそ!」


そう言うと狼男とゾンビは行ってしまった。

座席に一人になった一哉。

車窓の外を見る。

車窓から見えるのは満月の夜空。

眼下には街の明かりが瞬いていた……






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