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□ルピナス
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…彼の声が好き。


彼の手が好き。


彼の、香りが好き。


彼の仕事に対しての姿勢は好きだけど、心配になることも多々ある。

いつも忙しく業務をこなして、自分の休息や趣味の時間なんて皆無に等しい。

必要かなんて考えもしていないみたいだ。

ベッドの中でもゆっくりしているリヴァイはあまり見たことがない。

たまに一緒に夜を過ごしても、彼より早く起きられたことがない。




「オイ、出かけるぞ」


「……え……?…どこに…?」




事前の確認などなにもなかったのに、さも当たり前のように彼が呟く。

大きな窓から差し込む朝日の中で私服姿の彼がベッド脇に腰掛けて、スプリングが静かに沈んだ。


飾り気のないシャツに、暗い色のパンツ。
足元には私服の時によく履いているのを見かける皮靴。


団服とは違うその雰囲気も、好き。


私はあまり朝は強い方ではない。
リヴァイとは何もかもが正反対だ。


寝ぼけ眼でそんな彼を見つめて、その横顔に思わず見惚れてしまう。


…なんでこんなに綺麗な顔してるんだろう。


鼻の角度も、薄くて形の良い唇も、
少し不機嫌そうな眉の形も、
ビー玉細工みたいな綺麗な色をした瞳も。
全てが計算し尽くされたように秀麗だと思ってしまうのは惚れた弱味なのかな。

いつまでも見ていたいと思ってしまう。

こんなに好みの顔がこの世に存在していいのかな。

…出会った頃は、こんなに好きになるなんて思ってもいなかったのに。



「どこでもいい。
お前、行きたいところはないのか?」


彼の、私の名前を呼ぶ声が好き。

時々お前と呼ばれるのも、(リヴァイには絶対言わないけど)実は好き。



今日の夜にはまた会議の予定があるので、てっきりまた自主的に急ぎではない仕事でも終わらせに行くのかと思っていた。


一緒に時間を過ごすうちに新しい彼の一面が見えてくる。

彼の行動も、一緒に過ごすうちに少しずつ変わってきているような気がする。


もっともっと、知りたい。



「……リヴァイと一緒ならどこでもいいよ」



こんな恋愛の王道みたいなセリフが自分の口から自然に出るなんて、今までの私なら信じられなかった。


それでも、彼ならどんな言葉でも笑わずに受け止めてくれるんじゃないかと思ってしまう。



「………そうか。」



彼の目を細める仕草が好き。

彼の多くを語らないところも、好き。


時々不安になることもあるけど、彼の瞳を見るととことん信じてみようと思ってしまうから不思議だ。



「取り敢えず起きて着替えろ。
なに着るんだ…ほら」




彼の手が触れるのが好き。

実は世話焼きなところも、好き。


もっともっと、と思ってしまう。


上半身だけ羽織っていた寝衣を脱ごうとして彼に背を向けた瞬間、背後から腰に手が回ったことに気が付いた。


…え……あれ?


「……で、出かけるんじゃないの…?」


脱ぎかけていた手を止めると、いつの間に滑り込んだのか直に彼の手のひらが私の肌を滑る。


「と、思ったが…まだ時間も早い。
要は会議までに戻ればいいんだろう」


「えっ、リヴァイ、ちょっと…!」



そのまま彼の腕に引き寄せられて、もう一度ベッドに倒された。



ある意味終始マイペースの彼は意見を聞いてるわけではないので有無を言わせない。


いつも甘い言葉を貰えるわけじゃないけど…、それでも彼の手が私に触れる瞬間がたまらなく好き。



彼の唇が好きで、


彼の熱い体温が好きで…。


彼の腕の中でまどろむのがとてつもなく好き。




今までもこれからも、リヴァイには勝てる気がしない…。













(出かける時間、あるかなぁ…。)












ルピナス
おわり

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