WAY(ロー長編) 【完結】

□本当は寂しくて...
1ページ/4ページ

わたしとベポはローに叱られて、食料庫の整理をささっと終わらせた。


その頃にはもう夕飯の準備でみんなもう食堂に集まっていた。


「おう カブトムシちゃん、ベポ 終わったか?」


シャチがわたしとベポに水をくんでくれた。


「しかしよくこんなでっかい魚をしとめたよな」


「すごいでしょ♪」


「おーい 誰か俺のチョコ知らねえか?」


奥から聞こえてくる声にわたしとベポは固まる。


「ベポ、カブトムシちゃん 食料庫の整理中にチョコ見なかった?」


そういってペンギンはおかしいなと頭を傾ける。


「ペンギンさん……ごめんなさい そのチョコ……」

「ペンギン……おれたち………」


「え、知ってるのか?」


「「ごめんなさい、食べちゃいました」」


わたしとベポはペンギンに頭を深々下げた。


「ははは、なんだもう食べたのか!いや、いいんだ いいんだ もともとカブトムシちゃんにあげようとしてたやつだから」


「ペンギンさん……」


「その食い意地どうにかしろ」


わたしの後ろでローがそう言った。


「え、ロー?」


「カブトムシ、ペンギンにちゃんと謝っとけ」


「いや船長、いいんです いいんです」


「ペンギンさん、ごめんなさい」


「お前、あんだけ俺の部屋でいろんなもん食った後にまだチョコレート食べたのか?」


「うん」


「糖分の摂りすぎだ」


「だって小腹が空くんだもん」


「今日、デザートは食うなよ 摂取オーバーだ」


「嫌だ 食べる!ローはすぐ医療の話につなげるからイヤ!」


そう言いながらローはいつもの位置についた。


その横にわたしは座った。

ローはわたしになんだかんだと小難しいことを言ってくるが、それがとても懐かしくて 何よりわたしはとても嬉しい。


ローが海に出て1人でいた時間を埋めるように、この船にきてからローの一言一言やローの態度が全て嬉しく思う。


この船に乗ってからクルーのみんなに言われた。


「船長、無口なのにカブトムシちゃんがきてからいろんな話してくれるんだ」


と。


「きっとわたしにああだこうだ言わなくちゃいけないからだよ」


と、わたしは答えたがそんな間接的な言い回しでさえわたしはとてもとても嬉しい。


隣に座ってお酒を飲んでるローを見る。


ちらっとわたしと目が合ったが、厨房にいるペンギンに目をやる。


「船長、これですか?」


「あぁ その葡萄のジュースをついでやってくれ」


そんなやり取りをわたしは聞こえず、隣にローがいる嬉しさを噛みしめていた。

ローはわたしみたいな面倒な妹がきて、迷惑してるかもしれないなぁ。


でもローはいつだってわたしのそばにいてくれたし、いつも守ってくれて 励ましてくれて 時には厳しく突き放して でも必ず温かく迎えてくれた。


そんなローが一度遠く離れてしまった寂しさを知るわたしにとっては、またこんなすぐ近くにローがいてくれることが嬉しくてたまらない。


ブラコン?


なんでもいい!


わたし、ローがダイスキなんだ!


誰よりも誰よりもローがダイスキなんだ!



コン。


そんなことを思いながら自分の世界にいたら、わたしの目の前にグラスに入った葡萄ジュースが置かれた。

目をやるとローがわたしに差し出す。


「カブトムシ、また美味しい葡萄ジュース飲みたいって言ってたろ この間上陸した島が葡萄の産地でたまたま思い出したから手に入れた 飲んでみろ」


「いいの ロー!♪ありがとう!」


わたしはグラスを手に綺麗に輝く紫色の葡萄ジュースを飲んだ。


「おいしー!♪あのときの葡萄ジュースよりおいしー!♪」


「カブトムシちゃん、それね、なかなか手に入らない品物なんだよ」


と、言いながらペンギンがわたしとローに晩ごはんを持ってきてくれた。


「え!そうなの?」


「船長が珍しく酒じゃなく、ジュースなんか買うもんだから気になって話聞いてたら それすっごい品物だって店のやつ言ってたよ」

「そうなんだ!ローありがとう」


「あぁ いい」


「船長になんで葡萄ジュースなんかいるのか聞いたら、カブトムシちゃんが小さい頃 お土産で貰った葡萄ジュースを美味しい美味しいって飲んでて、また飲みたいって言ってたのを思い出したからあいつにやるんだって」


「ペンギン、べらべら話しすぎだ」


わたしはそんなローにギュッと抱きつく。


「ロー、好きー♪ありがとう!」


「お前、くっつくな」


わたしは離れるとローに満面の笑みで ありがとうと言った。


「船長、よかったですね カブトムシちゃん あんなに喜んでくれて」


「カブトムシちゃん、船長にだけズルい!俺にもギューを!」


「キャプテンズルーい!おれはメス熊が好きだけど、カブトムシは特別に好きなんだ!おれにもー!」


シャチとベポが後ろから叫んでた。


「また後でね〜♪」


と、わたしがシャチとベポに手を振った。


「ベポはいいにしても シャチにはするな」


「なんで?」


「あいつは下心がみえみえだ」


「船長、カブトムシちゃんに厳しいですね」



そんな話をしていると、


「島につきましたー」


と、クルーの声がした。



----------------------


next つづく
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ