MORE(ロー長編)【完結】
□no.10
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それから何変わらず日々が過ぎていった。
わたしの周りでシルバーズの言葉を聞くことは一度だってなかった。
ローは本当に誰1人にも言っていない。
社会にも新聞にも何1つわたしに関する話はない。
船内でもわたしはわたしのままだった。
ローさん、ありがとう。
わたしはリハビリのおかげでもう普通に歩けるようになっていた。
「カブトムシ、いっぱい歩けるようになったね♪」
スゴイ!スゴイ!とベポが手をパチパチしてくれている。
そんな横でローがわたしの傷口の最終チェックをしている。
椅子に座っているわたしは屈み込んでいるローのふかふか帽子から少しだけ見える隈で真っ黒の目を見つめる。
ローさん…本当にありがとう。
わたしはこのツラい傷を消してくれたこと、そしてシルバーズ・レイリーの娘と知ってもわたしをどうすることなく命を保証すると言ってくれたこと ローの全ての行為に感謝する。
「もう普通通りに生活できる 船内自由に歩いて回れ」
そう言ってローが立ち上がるとわたしと目が合う。
「なんだ」
「ローさん、本当にありがとうございます(*^^*)」
「そんなことか 礼はいい」
そう言ってローは部屋を出て行った。
「カブトムシやったね(o≧▽゜)o 一緒に釣りしたり、一緒に甲板で昼寝したり、みんなで宴もできるね♪」
「ベポ、本当にありがとうね♪(*^^*)ベポのおかげ♪」
「カブトムシいこいこー♪」
ベポはわたしの手を引いて日の射す甲板へと連れて行ってくれた。
シャチさん、ペンギンさん、他のクルーさんも温かく迎えてくれた。
わたしは普通に動けるようになった今、みんなのために何ができるだろうと考えた。
特にローさんに。
わたしはあることを思いつき、食道へと向かう。
「すみません」
「あい?」
ひょこっとコックさんが顔を出す。
「この船でお世話になることになったカブトムシといいます。」
「ぁぁ!お嬢ちゃんか!船長さんから聞いてるよ もう傷はいいのかい?」
「はい お陰様で(^^)実は、わたしこの船のみんなのためにあることをしたくて」
「あること?」
「コックさんがいるのにこんなこと言うの図々しいことかもしれませんが、夜の船番さんとローさんの夜食をわたしに作らせてもらえませんか?」
「ほぉー!今どき優しい子がいるもんだ わしは構わんよ ありがてぇくらいだ」
「いいんですか!?\(^^)/」
「ぁぁ、いいさ。夜のここはお嬢ちゃんが自由に使いな。わしは楽をさせてもらうよ 老いぼれにはありがたい」
「コックさん ありがとうございます(*^^*)」
そして早速今日の夜からわたしは船番さんとローさんの夜食担当になった。
コックさんには内緒でコックさんの朝ごはんもわたしは用意しようと決めた。
夕飯はいつものようにコックさんが作ってくれて、わたしは初めて食堂でみんなと一緒に食べた。
常にベポと一緒に行動しているため、初めての食堂の夕飯はベポチームのテーブルで食べた。
ベポチームはベポとシャチさんだ。
わたしはひょこっとベポの隣に座る。
シャチさんはとにかく明るくて終始笑いの絶えない話ばかりしてくれた。
ローさんはいつもカウンターで食べてるみたいだった。
コックさんや気まぐれでローさんの隣で食べるクルーもいて、ローさんは意外にお話しさんだと気づく。
そして夕飯の後はみんな個々の時間を楽しんでいた。
そして各々寝静まっていく。
わたしは食堂にいき、この船での初めてのお仕事を始めた。