MORE(ロー長編)【完結】

□no.19
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そんなわたしの視線にローが気付く。


「なんだ」


「ロー…ごめんなさい」


「………」


ローはまた医学書に目を戻したが、わたしはそのまま続けた。


「ローの言うこと聞かなかったからわたし…ローに捨てられるかと思った…本当にごめんなさい…」


ローのあの言葉が頭を巡る。


“人のもんに手ぇ出すな”

「次はねぇからな 覚悟しとけ」


と、ローは医学書を読みながらわたしにそう言った。

「はい!」


ローは自分のTシャツを一枚貸してくれて、船長室のお風呂で着替えて早く寝ろと言った。


わたしはローの言う通り、着替えを済ませてベッドに寝転んだ。


相変わらずローは医学書を読んでいた。


「ロー、まだ寝ないの?」

「あぁ、まだキリがよくねぇ」


「そっか」


わたしはベッドに寝転んでいたが、まだ寝ないローが気になった。


ローはパタっと医学書をとじて、船長室を出て行こうとした。


「ロー!どこ行くの!?」

ローがわたしのそばから離れようとしただけであの恐怖がよみがえる。


「あ?便所だ」


「…………あの…」


「なんだ」


「…早く…帰ってきてね」

「わかってる」


そう言ってローは船長室を出て行ったが、わたしはローが去ると一気に恐怖や不安やなんとも言えない気持ちでそわそわした。


さっきまでローがいてくれた安心感なんてローがいなくなったら何一つない。


ローが自分にとってどんなに大きな存在か知った。


するとローが帰ってきた。

わたしは我慢できずローに抱きついた。


「なんだ」


「ロー、もうどこにも行かないで(;_;)わたし、ローがいないと…」


するときゅっと強く抱きしめ返してくれた。


「心配しすぎだ」


ローはそう言うとソファに寝転がった。


「電気消すぞ」


「え、ローそこで寝るの?」


「お前にそこ貸したらここしかねぇだろ」


「ローがベッドで寝てよ わたしはそこでいい」


「うるせぇ お前は大人しくそこで寝ろ」


「でも………」


「お前がどうしてもって言うなら一緒に寝てやってもいいけどな」


と、ふっと笑った。


わたしはただ純粋にローにそばにいてほしいという思いで、


「一緒に寝てほしい」


と答えた。


ローもわたしがのるとは思っていなかったらしく、一瞬驚いていたがその後ニヤリと笑い、


「誘ってくんなよ」


と言って先にベッドに入った。


「誘うわけないじゃん!ローこそ変なことしないでよ」


「だから言ったろ 俺は女に不自由してねぇって まぁいい、こい」


そう言ってローはわたし入るスペースの布団を持ち上げた。


なんでだろう


ローのその仕草が心臓の鼓動を速める。


そしてローの隣に入り込むとパサッと布団をかけてくれた。


ふわっとローの匂いがする。


わたしは恥ずかしくてローに背を向けた。


「なに 照れてんのか」


「照れてない!」


「ならこっち向けよ」


「嫌!」


「本当にお前は言うこときかねぇな」


「ローがやらしいことしようとするからじゃん!」


「は?お前が一緒に寝たいって言ってきたんだろが」

「でもローは何かたくらんでる」


「可愛げがねぇな」


「うるさい( ̄^ ̄)」


そしてそのままわたしは眠りについた。


そんなわたしをローは優しく見ていてくれた。


このときのわたしはまだ自分の気持ちもローの気持ちも何も気づいていなかった。

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