MORE(ロー長編)【完結】

□no.9
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その日の夜、ベポはまた明日!とわたしの部屋を出た。


ベポは何から何までわたしのお世話をしようとしてくれる。


少し足を動かして痛がるだけでもすごく心配してくれた。


「カブトムシが動けるようになったらみんなカブトムシに会いたいって言ってたよ♪」


「キャプテンが父ちゃん見つかるまで船にいてもいいって♪」


「おれ、またカブトムシと一緒にいられるの嬉しいよ♪」


ベポ、わたしもまたベポといられるのが何より嬉しいよ。


ベポはわたしにこの船のみんなの話や、この船の造り、キャプテンのローはパンが嫌いだとかとても難しい医学書もスラスラ読めるだとかいろんな話をしてくれた。


わたしはまた明日もベポがきてくれるのを楽しみに寝ようとした。


コンコン


誰だろ…


「…はい」


「入るぞ」


そう言って入ってきたのはローだった。


「キャプテンさん」


「範囲が広いせいで少しでも動かすと痛みが出る 痛みがない程度に少しずつ動かして慣らしていけ」


「キャプテンさん…本当にありがとうございます」


わたしは頭を深々下げる。

「礼はいい」


「でも本当に嬉しいです」

「ならよかった」


「動けるようになったら何かキャプテンさんのお手伝いさせてください」


「別にいい それよりその呼び方やめろ 恥ずかしいだろ」


「え…(´・ω・`)?でもベポからキャプテン キャプテンって聞いていてつい…」


「ローでいい」


「え…(´・ω・`)?でもそれは…」


「グダグタ言うな さっさと寝ろ」


そう言うとローは部屋を出て行った。



わたしは次の日もその次の日も頑張ってリハビリを続けた。


そんなわたしのそばでいつもベポが励ましてくれた。

動けるようになったら釣りを教えてくれるだとか、一緒に島に上陸したらアイスクリームを食べようだとか。


しかしあるとき、治療室でベポと一緒にリハビリをしていたらシャチが走ってやってきた。


「ベポ、相手船と一戦交すことになった。すぐに甲板にこい!」


ベポはわたしに鍵をかけて待っててと言い、甲板へと走って向かった。


わたしは扉に向かい鍵を締めようとするとローが扉を開けて入ってきた。


「キャプ……あ、ロー………さん」


ローはふっと笑い、


「どうだ調子は」


と聞き、鍵を締めてイスに座った。


「シャチさんが一戦交すって」


「あぁ、雑魚が仕掛けてきた。俺の出る幕はねぇ」


そう言ってローは消毒液を綿につけてわたしの足にポンポンとつけてくれた。


「しみるか?」


「いえ…」


そしてわたしの足を見る。

「傷は順調に治っていっている あとは上手く動かせるようにしろ」


そう言うと医学書を開き読み始めた。


「あの…ロー…さん?」


「あ?」


ローがわたしを見る。


わたしは左足の膝の上の例の黒い点を指差す。


「これ、何か書いてあるの?」


ローは医学書をパタンととじる。


「お前が話す気がないなら教える必要はない」


「え…?」


「シルバーズなんてたくさんの意味なんかねぇよ 俺はシルバーズときたら“シルバーズ・レイリー”しか思い浮かばねぇけど」


「!?!?」


「お前がシルバーズに敏感に反応するのはなぜだ」


「………」


「足に記されてのは極めて小さい文字でシルバーズと書かれている」


「え!」


わたしは黒い点を見つめる。


そしてハッと思い出す。


そう言えば小さい頃、大怪我をしたことがあった。


そのときに治療だと言い何か膝の上をチクチクされたことがあった。


そのときは大怪我の方が痛くて痛くもなかった。


そしてレイリーが島を出るとき意味深なことを言っていたのを思い出す。


「お前は確かにわしの娘だ。どこにいようとだ だが、海には出るな。わしは必ず帰ってくる 待ってろ。カブトムシはシルバーズの名をひく者だ “消えぬよう記してある”。いつか堂々とその名を言えるときがくる。それを今は待て」


これのことだったんだ…


わたしはローがいるのを忘れるくらい昔のことを思い返していた。


「おい」


「え?」


「お父さんってなんだ」


「お父さん?」


「さっきぼうっと考えながら呟いていただろ」


え…無意識に言ってたんだ

どうしよう…バレたら終わりだ…


「全部話せ」


「それは…」


「ここは俺の船だ この船にいる以上、俺に従え」


「…でも」


「お前、シルバーズ・レイリーの娘だろ」


「!?!?!?」


「バレたらいろんなとこから命を狙われる そうだろ」


「!!!!!!」


「海賊の子どもなんて大体そうだ それがあの大海賊の副船長ともなればお前は変にバレるわけにはいかねぇだろうな」


だめだ…ローは全部わかってる…


「お前が話せば 俺の船で命は保証してやる」


「嘘でしょ…そんなの…」

「は?」


「前、助けてくれた海賊も最初は漁師のおじさんたちと一緒に次の島まで送っていってくれるって優しくしてくれた…なのに…」


「なんの話だ」


「そんな優しさ信じない…わたしは正体がバレたらいけないの…だから人のいない島で育てられた。お父さんもわたしが1人で生きていけるようになったらわたしのために島を出た…でも人間は孤独のツラさには勝てないんだよ…わたしは禁断の海に出た…バレたらそこで終わりなの……」


「どっかの海賊と同じにすんな はっきり言え」


「そう、わたしはレイリーの娘!シルバーズ・カブトムシ!」


わたしはこれで終わりでもいい…そう思った。


「やっぱりか」


「………わたしをどうするつもり?」


「は?どうもしねぇよ だから命の保証はしてやるって言ったはずだ」


「…本当に?…なんで?………」


「今現在、冥王が何をしてるのか俺も気になる そしてベポの恩人程度だ 他にグダグタ理屈がいるか」


「………………」


「俺の仲間がお前を仲間だと言う。だから俺の仲間であるみたいなもんだろ ない頭でとやかく考えんな」


わたしは生まれて初めて涙を流した。


ベポが尊敬する意味がわかったよ…
この人、人としておっきな人でとっても温かい人…


今まで1人で抱えてきたこの重みを半分ローに渡すことで、どれだけこの気持ちに変化がでただろう。


わたしは初めて信じると いう意味を知った。


「………うん」

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