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□好きなんですあなたのことが。だからいいですよね?
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「授業をはじめます!!」



あぁやだなぁ。悪魔薬学。だって先生があの奥村変態先生なんだもん。

こんな風に普通にしていたら本当にイケメンで秀才君に見えるのに。


おっといけない。思考回路が危うくなるところだった。

一度かぶりを降り名無しは机に突っ伏した。


最近へんなのだ。奥村変態先生の顔や声を聞いたり見たりするとあのキスを思い出す。

嫌だったはずなのに記憶から抹消したのに。



「名無しさーん」


「……」


「具合が悪いんですか?」


「……」



授業を続けてもらうためにと名無しはひとつ頷く。



「だから保健室いきまーす」


「あっちょ!!」



椅子から立ち上がり悪魔もビックリな早さで廊下に出た。



「保健室って塾にあんのか」


「ないよ」


「あいつ、頭悪かったんやな」


「授業は一旦中止。僕が戻ってくるまで自習」


「あ、奥村先生も大概頭悪いわ」











「奥村先生のやろー変態かっつーの。あ、変態だった!!」


「変態なのは名無しさん限定だよ?」


「うわぁぁあ!?本当に神出鬼没だなぁ!!」



後ろからおともなく現れた奥村先生。眼鏡のブリッジを中指で押し上げる。



「具合大丈夫ですか?」


「えぇ!?その為だけに来たの!?」

「もちろん」


「授業放棄とか先生ですか!?」


「授業サボるとか生徒ですか」


「ぐぬぅ…今日は真面目ですね」

「えぇ、心配なので一応」


「一応?一応なのか?」


「はい、で、なんで教室飛び出しんですか?」


「生徒のかおが醜かったのでつい…」


「僕の顔が?」


「なにその表情!?ウザッ!!」



言い争っていると雪男が急に肩を強く押して名無しを壁に追い詰める。

急なことに名無しはただ雪男を見る。



「名無しさん」


「なんすか…」


「……」


「っ!!」



いつもみたいにニヤニヤした笑いではなく。それは本当に優しくて。どこか大人びているいつもの雪男ではなく、15歳の雪男の表情。


「可愛」


「せんせっ!!」


「顔が赤いですよ?」


「あ、赤くない!!」


「フフ…」


「笑うな!」



いつもの雪男ではなく名無しはただただ翻弄されるばかりだ。
すると雪男は名無しの頬に手を添える。



「なっに…」


『好きなんですあなたのことが。だからいいですよね?』


「っ!!」


「キスしましょう?」


「……」


「目瞑ってますよ?」


「瞑ってない!!」


「可愛ですよ」


「か、可愛くない」


「好きですよ…」


「す、き…じゃないんだからな!」


「えぇ、好きなんですね」


「バ、バ、バカヤロー!!」



それから授業の終わりを知らせるチャイムまで二人はキスに没頭した。












『好きなんですあなたのことが。だからいいですよね?』


「い、いいわけあるかぁ!!」








end

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