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□彼が彼女で、彼女が彼で
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甘いケーキがこれで73個目。
モグモグ…美味しい。
長い道にはまだまだケーキが沢山ある。
「食べきれないよ…」
「名無し。起きてください」
ん、ケーキ74個目が喋ってる。 喋るケーキとか存在するんだね。まさか虚無界の食べ物とか?
まさか…ねぇ?
「名無し口を閉じて目を開けてください。大変です」
「ケーキ…食べちゃうぞ」
「起きてくださいっ」
「ん?」
あり?目の前に私がいる。
「おきましたか?」
「うん、でも夢?」
「夢じゃありません。ボクが起きたらこうなってました」
「ふーん?」
私は自分の手を見てみる。
見覚えのある長ーい爪がはえている。
頭に手をのせればあるはずのないトンガリがある。
「まさか…」
えぇ、声まで低くなって。
「名無しボクたち」
「……入れ替わっちゃった?」
「ハイ」
「うそぉぉん!!」
「ボクの体でうそぉぉんとかやめてください。お願いします」
「無理無理無理無理!頭ついていかないもん!!妙に落ち着いてる目の前の私にアマイモンがいるってこと!?」
「そー言うことです」
まさかの事態に私は頭を抱えた。目の前の私(アマイモン)は「変な格好しないで下さい」とかいってる。
一応言うけど私の格好でソファーに足あげないでよ。
パンツモロ見えじゃん!
「どうしたらいいんだよ…」
「兄上が来るのを暫く待ちましょう」
「ちょぉー落ち着いてるんですけど〜」
「名無し喋らないで下さい。本当にお願いします」
「えぇ……いいじゃん。はぁー…紅茶飲んで落ち着こう」
「そうしてください」
私は机にあるもう覚めたであろう紅茶を手に取る。
パリン!!
ビチャッ!!
「え?」
「何してるんですか?名無し」
「カップ持っただけなのに」
「力の制御ができてないんですね。ボクの体ですから」
普通に私の時に持つようにしただけなのに。
今度は綿飴を潰さないように取るようにしてフォークを手に取ってみる。
ボキ!!
ガラガラ…
「……っチクショ!!」
「紅茶飲みたいならこれどうです?」
「ストロー!!」
アマイモンがもう一つの紅茶にストローをさしてくれた。
うん。これなら飲めそう。
「冷たい…」
「当たり前です」
アマイモンは私の格好で優雅に足を組んでケーキを食べている。
呑気なやつ。私は死活問題だよまったく。
でもアマイモンは本当に力を押さえて私に触れてたんだな。
ちょっぴり見直しちゃった。
今度からは少しの我が儘も聞いてあげようかな。
私がアマイモンで、アマイモンが私!
「メフィスト!!助けて」
「この愚弟が!!私を呼び捨てにするな」
「……」
end