ブック

□ぽかぽかします
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いきなりですがボクは大好きな人がいます。

その人はスッゴク綺麗でかわいくて、笑うと花が咲いたみたいに美しいんです。

そしてその綺麗な口から透き通るような声で「アマイモンさん」って呼ばれる度にあたたかくってぽかぽかした気持ちになります。


これがなんなのか、それを兄上に聞いたらそれは"恋"だ、と教えてくれました。

恋、だからボクは余すことなく彼女に、名無しに愛を注ぎます。
それが悪魔にはあるまじき行為だと笑われて後ろ指を指されても。
ボクは名無しを愛したいです。


「アマイモンさん?」


「名無し?」


「ここにいたんですね?お茶にしませんか?」


「わーい」



太陽の下、テラスで寛いでいたボクを呼ぶ愛しい声。

そして甘い匂い。

綺麗な手で渡された紅茶は兄上が淹れてくれるものなんか比べ物にならないくらい甘くて、美味しい。



「今日のはアッサムです。この前アマイモンさんが美味しいと飲んでくださったから」


「名無しの紅茶は全部美味しいですよ?だから明日も淹れてください」


「もちろんです」


「名無し」


「アマイモンさん?」



華奢な体を後ろから抱き締める。もちろん、名無しが持ってる紅茶を溢さないように優しく。
戸惑う名無しを抱き締めながら名無しのぬくもりを確かめる。

悪魔を殺し血に染まったボクを、兄上の駒として動くボクを、悪魔であるボクを浄化するような心地よいぬくもり。

名無しはボクを怖がらない。
悪魔であるボクを受け入れてくれて認めてくれた。

ボクがボクでいられる唯一の居場所は名無しの隣。



「アマイモンさん。今日は暖かいですね」


「名無しもぽかぽかします」

「そうですか?アマイモンさんもぽかぽかして気持ちいいです。ずっとこうしていたいです」


「……ボクもです」



ボクには勿体ないくらいの真っ直ぐで綺麗な言葉。
欲しい言葉を塞ぐ唇。

どんどん名無しに惹かれていく。


ボクには名無しが欲しい言葉をうまく話せる自信はありません。

だから少しでもボクの気持ちを名無しに届けるように抱き締める。

壊れないようにそっと。




ボクの気持ちが全部全部名無しに伝わるといいな。

そしたらきっと名無しは「私も同じです」って微笑むんだ。








ぽかぽかします










このぬくもりを居場所を名無しを繋ぎ止めるようにボクはそっとキスを落とした。














end

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