「マ、マスルール…」
「?」
「彼顔真っ青だぞ!?今にも泡を吹きそうだから離してやれ」
パッ
『うがぁぁ!!がはっ……うぃー…死ぬかと思った…』
俺はナナシなんだけどよ。
今やっと息をすることが叶った。もう半ば生を諦めかけたときだったさ。
目の前の赤髪の巨漢を睨んでやった。ちきしょー。どうやったら身長そんなに伸びるんだよ。
だいたい俺を取り囲んでる奴等全員身長高すぎるんだよ。
見下ろさないでくれ頼む切実に。
「ハァーシン逃げられては困るんですよ。早く王宮に戻りますよ。マスルール首布を持ちなさい」
『うぎゃ!!お、俺あなた無理ッス!!力強い!!』
「ジャーファル。嫌がっているじゃないか」
「あんた分かってんですか!?あなたの服に染みをつけて尚且つあの口調!!シンも王であることを自覚してください!」
「職業病だな。ジャーファル」
「うるさい」
「あ、」
もう抵抗はやめだ。
王宮に着いたらまたたっぷり酸素を吸い込もう。
そうしよう。
てなことを考えていたら赤髪のあんちゃんが俺に顔をグイッと近づけた。
な、なんだ!?
ジィーと切れ長の目でマジマジとみられる。
気まずくて俺は顔を赤髪のあんちゃんからそらす。
「見ろジャーファル。マスルールもあんなに彼と仲がいいじゃないか。彼はいいやつさ」
「マスルール!?」
「シンさん、これ」
『いでぇっ!?』
グキィと嫌な音がするくらい顔を右向きにされる。
顎をつかむ手も首もミシミシいってる。
「っ!?金属器!!」
「なに?あぁ!本当だ!!」
『え!?あ、ちょっと離してくださいッス!!』
金属器ってバレてしまった。別にバレてもいいけど。金属器の存在を知っているこの人達は何者なんだ。
紫色の長髪のあんちゃんと銀髪のあんちゃんがジィーとみてくる。しかも目線を会わせて。
居心地悪っ!?
つか、なにこの人達。身長に恵まれていてさらに顔も恵まれてる。その端正な顔で俺を見るな!
『……っ//』
「シン、金属器を持っているならなおのこと要注意です。暗殺者かもしれません」
「よく見てみろジャーファル。こんなに可愛いじゃないか!彼が暗殺者な訳がない!!君名前と金属器について詳しく聞かせてくれないか!」
「シン!!」
『あ、…ーっとナナシッス』
「ナナシ君か!いい名前だ。それでその金属器はどんなものなんだ?」
とってもキラキラした顔の紫色の長髪あんちゃん。大型犬みたいだな。
『この金属器にはマハカラークというジンが宿ってるッス。はい、終了はい、終わりぃ!!』
マハカラークなんてあんまり知られてないだろうけど。嘘ついたって仕方ない。
早く話をつけて王宮に連れていかれる前に逃走しよう。うん、ナイスアイディア。
「…マハカラーク。聞いたこと無いですね。知っていますか?」
「俺も知らないッス」
よし、今が好機。三人が肩を並べ話している。
俺の存在を忘れている今が逃走チャンスだ!!
『んじゃ、さよぐふっぅ!?』
「ナナシ君?」
あぁ、転けたさ。
転けたとも。みっともないほど盛大に。恥ずかしい。
上からかなり覚めた目で俺を見てくる銀髪のあんちゃん。
うん。俺とよくにた目をしてる。
「大丈夫か?それにしてもマハカラーク。面白いジンを持っているねナナシ君」
『知ってるのか!?』
「口を慎みなさい」
『いだぁ!?』
「あぁ、知っているさ。凄いジンだ。従わせるにはそれ相応の力が必要だと聞く」
「従わせなければならないほど強力なジンなんですか?」
『……』
「そうだ。マハカラーク、別名は大いなる暗黒。闇を見つけては付け入り堕とそうとする。マハカラークをジンとするならば強力な精神を保たなければ無理だ。ナナシ君は相当な精神力の持ち主なんだろうな」
『俺はそんな大層な人間じゃないッス。ただの飾りッス』
詳しいな、紫色の長髪あんちゃん。たくさんの知識を持っているんだな。
けど、それでもマハカラークはこじんまりとした迷宮で、あまり知名度も高くないはず。
この紫色の長髪あんちゃん只者じゃない気がする。
「そうか!機会があれば見せてもらいたいものだな」シンドバッド王です。
『いや、見せませんッスから』
「シン早く王宮へ行きますよ。マハカラークについても調べたいので、あなたもですからねナナシさん」
『は、はいッス…』
やべぇ、絶対零度の目だった。射ぬかれて死んでしまうような目だった。
この人も侮れないな。
「では、マスルール首布を「暴れウツボが出たぞぉぉぉ!!」…シン!!」
「あぁ!八人将を召喚しろ。俺はマスルールと先に向かう。ナナシ君さぁ、行こう!」
『はぁっ!?』
なんだってんだい!!
町が騒がしくなって3人も慌ただしく言葉を交わす。
なんとなく俺は大変な目に遭いそうな気がする。
こんごもずっっっっっー…と!!
end