ナナシ君を王宮につれていく途中まさかまさかの暴れウツボ登場。
俺も驚いたが一国の王たる俺が取り乱すわけにはいかない。
ジャーファルが八人将を収集するまで待つんだシンドバッド!!
「ナナシにぃーちゃん!!リクがぁ!!」
『んぁ?ナルーシャどうした?』
「リクが暴れウツボの牙に引っ掛かったの!ナナシにぃーちゃんに魚釣るって海にいったら暴れウツボに…っ!!助けてよナナシにぃーちゃん!!」
『……』
「お嬢さん落ち着いて。すぐ八人将が揃う。リク君も必ず助けるよ!」
リク君と言えば俺とぶつかったあの少年だ。
落ち着かせるようにお嬢さんの頭を撫でてあげれば少しだけ落ち着きを取り戻す。よし、良い娘だ。
しかし眉は下がったままで不安要素は拭えていないようだ。
「まだか…」
『ナルーシャを頼むッス』
「「っ!?」」
そう言ってまたあの瞬き1つの速さでナナシ君はいなくなる。
それより驚いたのはナナシ君が放つ禍々しいオーラ。
ルフは白く美しいままなのに恐ろしく禍々しいオーラを放っていた。殺気と間違えるほどに。
「シン!!」
「ジャーファルか!!急ぐぞ!!ナルーシャ君は離れていてくれたまえ」
「リクとナナシにぃーちゃんを助けてあげて王様!!」
「任せなさい」
ナルーシャの頭を再度撫でて暴れウツボがいる場所へ急ぐ。
それにしてもナナシ君が見当たらない。かなりの速さで暴れウツボの元まで行ったに違いない。
『リク!!』
「ナナシにぃーちゃん!!」
『何捕まってんだよ!?…お前が死んだら俺は…っ!!このウツボ許さねぇ……』
暴れウツボの元に八人将とたどり着けばまさにナナシ君が暴れウツボの頭に乗っていて。
肩にリク君を担いでいる。
禍々しいオーラは消えないままだ。
「シンどうしますか?」
「……っ。ナナシ君に任せてみる。もしもの場合は八人将を駆り出す。それにマハカラークの力も見られるかもしれんからな」
八人将の皆には悪いことをしたがここはナナシ君の力を見ておきたい。
緊張した雰囲気の中で国民も八人将の皆も俺も暴れウツボの上に乗ったナナシ君たちを見る。
「ナナシにぃーちゃん!!その"目"止めろよ!また"あの時"みたいな"マソウ"になっちゃうぞ!!」
「っ!?……マソウ?」
マソウとはあの魔装のことなのか?
聞きたいことは沢山あったがその一言でナナシ君の禍々しいオーラが消えていくのがわかった。
『悪ぃ。こいつ倒して謝肉宴するんだよな!』
「おう!がんばれナナシにぃーちゃん!!」
『あぁ!救済と黯然の精霊よ。汝と汝の眷属に命ず。我が魔力を糧とし我が身を護る武器となれ。ディーゴ・サッド(風を纏え)マハカラーク!!』
「かっけぇぇぇ!!」
ナナシ君の右耳のピアスが形を変えて1つの短刀になる。
刃には風を纏っている。
「凄い魔力だ…」
「王よあれは誰なんです?」
「たまたま会ったただの青年だよヤムライハ。しかし、この魔力。"ただ"の青年ではないのだろうな…」
「本当に…すごい魔力だわ」
そしてナナシ君は暴れウツボの尾までリク君をかつぎスキップしながら鼻唄を歌う。
国民も八人将も俺も一同「はぁ?」と声をあげた。
あ、あれ?武器化したのにスキップ?倒さないのか?
頭にはてなが過る。
その間にナナシ君は地面に着地してリク君とワヤワヤしている。
「王、俺が行きます」
「あ、あぁ。頼むよシャルルカン」
武器化したのに意味はなかったのか。もしかしたら俺のお門違いだったのかもしれない。
「行け!シャルルカン!!」
「仰せのまま…」
ドシャァァァン!!
「っ!?シャ、シャルルカン早いな!?さすが、綺麗な輪切りだ」
「お、俺じゃないですよ!?剣も抜いてないですし…」
「ま、まさか…」
ナナシ君がやったのか?
あんなスキップをして右手に持った刀を振りもしないで。
「っ!!」
そうだ彼はものすごく速いではないか。あの速さがあればこんなこと意図も簡単にやってしまうのではないか?
やはりナナシ君、君は凄い人間なのかもしれないな。
『あ、紫色の長髪あんちゃん!!やったぜぇ!』
「なっ!!また性懲りもなくシンにそんなくちをきいて!!あなたわかってるのですか!?」
『え?何が?』
「ここにいる御方こそシンドリアの国王。シンドバッド王なんですよ!?」
「バラすなよジャーファル」
『シン…ド、バッド…?』
「ナナシにぃーちゃん大丈夫か?」
『シンドバッドォォォォォ!?』
ナナシ君のその叫び声が謝肉宴の開催の合図だったんだ。とは、本人は気づいていないのだろうな。
end