シンドバッド国王。
この人は実に不思議だ。
俺に力を貸してくれだって。
不本意だが俺は煌帝国の人間だ。表面上で友好関係にあるシンドリアと煌帝国。
しかし侵略国家である煌帝国は手段を選ばない。いつ、シンドリアを侵略してもおかしくないし、表面上の友好関係などたかが知れている。
シンドバッドさんはきっと気づいてる。
だから断るつもりで煌帝国の構えを見せたのだけど
「ナナシ君、君を信じよう。その力存分に発揮してくれ!」
だってさ。
もしかしたらこのシンドバッドさんは俺と似ているのかもしれない。
このシンドリアの為に力を得ることに手段を選ばない。何を犠牲にしてもだ。その度に自分の心を殺してシンドリアをより良くしてきたのかもしれない。
俺も同じ。
弱い自分が嫌いでなにも守れなかった。だからわざとマハカラークを選んだんだ。
強さを得るために沢山自分の感情を押し殺してきた。 もう2度と大切な人を失わないように。
だから今の自分があるのだ。
だからその自己を犠牲にする考え方が凄く分かる。
うん。シンドバッドさんはだからあんなに部下に慕われているんだ。どんなときも一番に国民を部下を優先させるシンドバッドさんを。
うん。
少しだけ俺とシンドバッドさんは似てるな。
「あはははは!」
「シンドバッド様ぁ!次私もお膝に!!」
「私も!!」
「あはははは!」
『………』
あんなに信頼されて立派な国王にっ…
「きゃーシンドバッド様ったらぁ」
「どーぞ!」
「あはははは!」
『……俺はずかしぃ!!前言撤回!!前言撤回ぃぃぃ!!!!』
「…ナナシ君?」
何であんな女に節操がないんだ!?え?むっちゃいい国王〜てべた褒めした瞬間これかよ!
恥ずかしくていてもたってもいられねーよ!
いや、まて。ただ女誑しなんだよ。それを抜かしたら多分いい国王様なんだよ。
『女誑しな国王ってなんだよ…おわってるじゃねーかシンドリア』
「ナナシさん。あなた…」
『ジャーファルさん』
方をポンと優しく叩いてくれたジャーファルさん。
俺の心の葛藤が伝わったのか本当に優しい顔をしている。
「ナナシ君もきたまえ!!ほら皆彼が今日暴れウツボを撃退してくれたナナシ君だ」
「彼がぁ!!きゃー!!可愛い!!」
「ナナシ様もいらして!」
『…ジャーファルさん。俺は…』
「……」
優しくてをふるジャーファルさん。優しい笑顔はどこえやら諦めろと言いたげな顔になっていた。
『はぁー…』
黙ってシンドバッドさんの隣に立つ。いや、シンドバッドさんは座ってるけどね。
そしたらポンポンと自分の隣を叩くシンドバッドさん。
仕方なく座ればあれよあれよと女性が膝に乗ってくる。
『や、やめれぃ!!』
「照れてるの?可愛いわぁ」
「あはははは!!ナナシ君は女性慣れしてないんだな!」
『違っ…くもないけど。君達はそんなにベタベタ男性に近づくもんじゃないよ』
「なんでですかぁ?」
「可愛いのに!!」
『か、かっこいいの間違いだろ!!』
「いや、ナナシ君は可愛いに入るな。ちっさいし。女性のようだ!どうだ?膝に乗るか?」
『乗るわけないだろ!?ちっさい言うな!!まったく…』
膝に乗ってる女性をゆっくり下ろして自分が座っていたところに座らせる。
はてなを浮かべた綺麗な女性に近くにあったお酒を渡す。
『酒の匂いに気分が高くなるのは悪いことじゃないけど。そうやって膝に座ったり過度に接触するのは本当に心から慕った人だけにしな?わかったか?』
手を取りゆっくり優しくいってあげれば目の前には顔から湯気を出さんばかりに真っ赤になった女性がいた。
あれ?おかしなこと言っちゃたかな!?
『あ、いや、の…』
「き…です」
『はぁ?』
「好きです!!ナナシ様結婚して!」
『え!?』
「普段は可愛らしいお顔なのにどうしてあんなに勇ましい笑顔を持っているのですか!?私ナナシ様に一目惚れしましたぁ」
『ちょっとシンさん助けて』
「あれは…うん。ナナシ君が悪いな。あんな顔であんなこと言われたら俺も惚れてしまう」
『え!?どんな顔!?つか、意味わからない!!助けろはぜババ!!』
「俺!?つか、はぜババじゃねーよアリババだ!!」
女性が腰にまとわりつくのを必死に引きはなそうとしながらアリババの元へと急ぐ。
シンドバッドさんも血迷ったことを言い出したし怖すぎる。
『ほら、離して?シンドバッドさんはあっちだよ?』
「いやぁ!!ナナシ様がいいのぉ!!」
「おい、ナナシ羨ましいぞコノヤロー」
『はぜババぁぁぁぁ!!』
華奢な女性を無下にもできずに俺は叫んだ。
アリババ八つ当たりさせろ。
それより、この女性どうしたものか。
『…俺は大胆な娘よりおしとやかな娘のが好きだなぁ』
「っ!!」
『ふふ…ほらご飯食べておいで』
「は、はぃ…」
「…ナナシ」
『んぁ?』
「…いい」
アリババよ。
お前のその顔今ならマハカラークに頼み込んで潰してもらえる気がするよ。
だから鼻の下伸ばさないで。
しかし周りの人たち。シンドバッドさんも八人将の人たち。さらにはアラジン、モルジアナまでもがそんな顔をしているなんて俺には気づくよしもなかった。
end