なんなんだ。
この男は。
俺の肩にてを回してギャーギャー剣技がアレだとか、魔法は邪道だとか。
それだけなら我慢できる。
しかしなんだ。右隣にくっついているアリババはよ。
話を聞いていくうちに左にいる褐色の銀髪あんちゃんの弟子がアリババ。右隣にくっついているのがアリババの師匠さん。
「なれよぉ〜もっと強くしてやるぞ!」
「なるなよぉ!!ナナシは強いだろ!?」
「コイツは弟子にすんだぁ!」
「ダメです!!」
アリババは純粋に師匠をとられるのが嫌なんだろうけど鬱陶しくて叶わない。
それより腰に回した手を離せ。肩に回した腕離せ。
暑苦しいから。
しばらくして矛先が俺からはなれる。二人は二人の意見をぶつけ合って喧嘩勃発。
――師匠は俺で手一杯でしょーが!!二人弟子いたらどっちか怠るでしょ!どーせ俺なんだからさ!!
――うるせぇ!!お前より強くなりそうなんだよ!つか、顔が可愛いんだよ!剣技も得意で顔が可愛いとか犯罪だろ!?
――知りませんから!!確かに可愛いかもしれませんけど!!
『なんで可愛いに行き着くんだよ!』
喧嘩する二人に吐き捨てて俺は静かな場所に来た。
騒がしい場所が苦手な訳ではないけど。
自分を話題に出されていると気分は良くない。どうせなら聞こえないどこかで言ってくれ。
だけどあの二人にそれを言い出せる雰囲気ではないので俺がこちらに来たのだ。
『ふぅ…』
静かだ。遠くに聞こえる声がどこか心地よい。
そう言えば煌帝国にも祭りと言うものはあった。
だが、頻度は少ない。
このシンドリアは祭り、宴の頻度が高い。
その度に国民達との交流があるからシンドリアは皆なかがいいのだろう。
煌帝国と比べるわけではないけど本当にいい国だと思う。
『眠っ…』
「やぁ!ナナシ君」
『あ、シンさん』
「首がコクコクしていたぞ?眠いのか?」
『うん。多分、シンさんこそなんでこんなところに?』
「ジャーファルから逃げてきたら君を見つけて」
『そっか』
うーん。
それにしても眠たい。
『シンさんはこの国が好きなのか?』
「あぁ」
『俺も好き。リクも好きだってさ。シンさんのように暖かい国だと思うよ。俺が居座るにはもったいない国だと思う』
「もったいない?」
『俺は身も心も真っ黒だからねぇ。マハカラークみたいに。ハハハ』
「真っ黒には見えないよ」
『うん。見せてないからね』
眠たいせいか饒舌になってるのがわかる。
半分意識が朦朧としていて、自分が何を話しているのかわからない。けれど感じたことのない温もりを感じる気がする。
『生まれて物心付く前に刀を握らされて。は、って我にかえったらもう遅かった。目には見えないけどこの手は真っ赤に染まっていた。どれだけ人を殺したかなんてわからない。言われるがままに殺してきたからね』
「煌帝国で、か?」
『うん。暗殺者として沢山殺したさ。大事だった親もね』
「っ!!」
『あーあ…この国は、…俺には…た……い…』
「ナナシ君?」
俺は眠気に逆らうことなく深く深く眠りについた。
なんだか夢見が良さそうな感じがしたけど気のせいかな?
end