色染くココロ

□不本意で使い魔
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悪魔の癖に私は神に祈ったんだ。

まだ生きていたい。悔いがあるのだと。



「ぐるぁがぁぁ!!」



あぁ、神よ。悪魔の願いは聞き入れられないか?
悪魔は幸せを祈ってはいけないのか?



「っ!!」


「よっと!」


「なっ…」


「大丈夫かアンタ?」



長いコートを靡かせながらこちらに駆け寄る男性。

短髪にメガネ。口にくわえているのは短くなった煙草。

肩に担いだマシンガンを地面に投げ捨て私の腹をみる。

鬼は大丈夫なのかと男性の肩から後ろをみる。
しかし鬼は一匹も見当たらない。あの数秒ですべて殺したのかな?
何者だ?こいつ……。



「おめぇ…悪魔か?」


「……あぁ」


「傷直んないのか?」


「見ての通り…」



ハハハと笑って見せれば男性は眉を潜める。
チッと舌打ちした後にガサゴソと腰のポーチを漁る。



「……」


「なにするんだよ…」


「応急処置すんだよ」


「いいって…」


「大人しくしろ」


「いった!」



額に強めのデコピンをくらう。痛みに顔を歪めると男性はニヤニヤと笑っていた。



「俺は藤本獅郎だ。おめぇ名前は?」


「ナナシ……」


「ナナシっていやぁ、よくお伽噺できく名前だな」


「そうなのか?」


「おー。泣き止まない子供を楽しませるとか喧嘩してる奴等を止めた後仲良く遊ぶとか…その後必ず血を要求するんだとか」


「へぇ〜」



喋りながらも手を止めない藤本。感心しながら見ていると一段落したみたいだ。



「よし。完了」


「ありがとう」


「お前本当に悪魔か?」


「んで?」


「いや、なんとなく…人間染みてるからよ」



新しく取り出した煙草をくわえる藤本。

煙たいが命の恩人なのでなにも言わない。



「……いく宛あんのかよ…?」



暫くの沈黙の後藤本は確かにそう言った。

いく宛?彼は何を言っているんだ。相手は悪魔だぞ?



「……ない」


「そっか!じゃあいくか!!」


「ひやぁ!?」



いきなり藤本に抱き上げられる。所謂お姫様抱っこだ。

急だったが労るような優しい手つきだ。



「お、おろせ!?ばっか…」


「なんだ?元気じゃねーか!!」


「うるさい!」


「今日から俺の使い魔な!よろしくナナシ!」


「はぁ!?」



いきなり何を言い出すんだ?

使い魔にするだと?こんなぼろぼろな私と?

と、いうかどんだけお人好しなんだ!!悪魔の思うつぼだぞ。



「拒否権はないからな!にゃはははは!!」


「拒否権をとやかく言う権利は藤本にはない!!」


「獅郎って呼べ。な?ナナシ」


「っ!!てか、おろせ!!」


「やーだーよーん!!」



子供か!!

だが、何をいっても聞いてくれなさそうなので私はため息をついて体の力を抜く。

頭を獅郎の胸に預けてなるようになれと目を瞑った。












end


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