色染くココロ

□道化師の仮説談
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「おい、任務ってなんだよ?」


「おや、随分荒れてますね☆」



あのあと頭を冷やそうと2本目の煙草をくわえたときメフィストからの任務の電話。

落ち着かせた心は一気に戻り苛立ちが充満する。

鍵を使ってメフィストの馬鹿野郎の部屋に行けばいつもみたいに飄々としたメフィストの姿。

額に浮かぶ血管がドクンと脈打つのが聞こえる。

……顔がウゼェっ!!



「あぁ任務はですね、森林に小鬼か大量発生しているようで。既に怪我人が出ていまして、討伐任務です☆」


「んな、簡単な任務テメェがいけよ」


「おや、私は書類整理に勤しんでいるので無理です☆」


「っち!アイスがツメテートライだみたいな呪文でどーにかできるだろ!糞ピエロが」


「アインス、ツヴァイ、ドライです。馬鹿にしないでください☆」


アインス、ツヴァイ、ドライなんて知らねーんだよ。興味もねぇ。
つーか下級悪魔討伐任務なんて俺を使うな。
俺は現在絶賛聖騎士なんだぞ。
怪我人がいたって関係ねぇ。



「アナタねぇ。一流祓魔師が私情で仕事を差し支えさせるなんて…アインス☆ツヴァイ☆ドライ」


「うぉ!?」


「紅茶をのんで落ち着きなさい」

「任務はいいのかよ!?」


「えぇ、他の人達に向かわせました☆」


「っぐ!!」



最初からそうしとけ!!
俺を呼ぶな!



「それより藤本知ってますか?」

「あぁ!?」


「最近虚無界でまた"暇潰し"があったらしいですよ?負けた方が奇跡的に生きてましてね。物質界に堕とされたらしいですけど……心当たり有ります?」



虚無界の"暇潰し"っていやぁー魔神主催の所謂殺し合いのことか。
最近じゃ無惨な死体が物質界にゴロゴロ堕ちてやがる。

さすがにそんなもん肥料にもならねーよ。



「確か…愚弟によれば堕ちたのは女性で……吸血鬼だったとか…」

「っ!!」



大怪我、吸血鬼、最近現れた…。そんなのナナシ意外いないだろ!!

焦る鼓動がうるさい。
額から伝う汗が鬱陶しい。


メフィストの目が細くなって嫌な笑みを浮かべている。

胡散臭ぇ。



「ま、いいです☆それより吸血鬼って殆ど知られていないそうですよ?」


「はぁ?」


「生態もどの劵属かさえも。あるものは死体から吸血鬼になる、だから腐の王だとか、幽霊的存在だ、氣の王に違いないとか…その節は無限大です。生きていくなかで弱点だった月齢などは今となってはひとつも効かないらしいです☆」


「っ…」


「吸血鬼にとって血は命で吸わなければ存在は消滅するらしいですよ。血を欲する周期は色々らしいですけどね…1週間に1度、白夜、十五夜、雨の日…まあ、全て仮説なんですがね」


「メフィスト……今日はなんの日だ?」


「はぁ?今日は…普通の日ですよ?強いて言うなら…あぁ十五夜ですね☆」


「十五夜…」



メフィストの話しからしたら吸血鬼は、ナナシは今日血を吸う日なのか。

だから顔色が悪くて息が荒かったのか!


朝のナナシとメフィストの言う吸血鬼が一緒なら合点がつく。
だから、ナナシは俺らを傷付けないように?



「くっそ!!」


「はぁ!?」



なんできづけなかったんだ!!
不甲斐ない自分に腹が立つ。

こんなんじゃ聖騎士失格だぜ。


「メフィスト!!今回はテメェに感謝してやる!!」


「今回はってなんですか!!」


「じゃーな!!」



俺は鍵を掴んでナナシを探しに駆け出した。















「吸血鬼、ね。………ククク…興味深い…」








誰にも届かないそれは悪魔の囁き








end

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