「なぁ、獅郎…」
「んぁ?」
「肩痛くないか?」
「辛気くせぇ顔すんなよ。俺なら大丈夫だからよ。ナナシこそもう血いらないのか?」
「大丈夫…」
いま私と獅郎は教会に帰ってきて風呂に入っている。
私を姫抱きにして肩から血を流す獅郎を見た長友達のあの驚いた顔。そんな中獅郎が「風呂に入ってくる」なんて爆弾を投下したから長友達はパニック状態。
風呂場で着替えていたとき「ギャー」とか「赤飯だぁ」「まじで神父なの!?」とか騒いでる声がして。
気づかれてるし。
私は情事を思い出して顔が真っ赤になった。
「うぅ…」
「なんだぁ?ナナシ。可愛顔してるとまた襲っちまうぞ?」
「ば、ばか!」
「にゃははは!!顔真っ赤!」
「う、うるさい!!」
ばっと立ち上がり獅郎の頭をお湯につけてやった。
手をバタバタさせながらもがく様はひどく滑稽だ。
ニヤニヤしながらそれを見ていたら獅郎の手がちょうどバスタオルを掴む。
「っな!?」
「っがは…けほっけほっ…あり?なんて格好してんだ!!ははぁ……誘ってんのか」
「お前が取ったんだろうが!!」
「えぇ?おれがか?」
ニヤニヤしやがって確信犯め!!
「まぁいいじゃねーか!こっちこいよ!!見られて減るもんじゃねーし」
「減るわ!!私の何かが!わっ!?」
急に手を引っ張られた。
そして後ろから獅郎に抱き締められるかたちになる。
つか、バスタオルを返せ!!
「ナナシの首俺の痕いっぱいついてんな」
「っ!!触るな!」
「んだよ…さっきまで、しろーって喘いでたくせに」
「っ!!あ、あれは獅郎が!」
「俺がなんだよ?」
「ひっ」
後ろから胸を鷲掴みにされる。
背中に感じるのは獅郎の荒い息づかい。ヤバイぞ…。
「きょ、今日は終わりだ!!エロ神父!!」
「ごふぁっ!?」
「逃げるが勝ち!!」
「あ、てめ!!逃げんな!!」
「追いかけてくるなぁ!!」
「おい!?そっち長友達が…服きろ服を!!」
「「「「あ…」」」」
「へっ…」
ガチャリと開けたのはリビングのような広間。
まさに教徒達がご飯作りに勤しんでいて。
「ちょ、ナナシさん目に毒ですって…」
「めっちゃナイスボイン!!」
「ナナシちゃんバスタオル一枚でもダメだろ、うんダメだ」
「早く服着なきゃ!!」
「だから走んなっつったろ!!この馬鹿!お前らも見てんじゃねー!!つか、和泉あとで死刑決定な!」
「え!?」
「わっ獅郎!!」
和泉どんまい!!
てか、アンタもバスタオル一枚かい!!
獅郎に腕を引っ張られているナナシを見届け苦笑いをするしかない教徒達。
「嵐ですね」
「和泉どんまい。ナイスボインを最後に見れてよかったな」
「経堂さん助けてっ!!」
「無理」
「長友さん丸太さんんんん!!」
「「無理無理」」
「馬鹿獅郎!!追いかけてくるから皆に見られたろ!」
「止まれって言ったからな!」
「っち…」
獅郎の部屋にて。
現在ドライヤー中。獅郎がしてくれてる。
「つか、恥ずかしがんなよ。これからそんなこと沢山あんだからよ。毎回逃げられてちゃ敵わねよ」
「毎回って…」
「付き合ってんだからよ」
「付き合ってんのか!?」
「え!?」
「えぇ!?」
私は咄嗟に後ろの獅郎を見る。
獅郎も驚いた顔してる。
だって私達は成り行きでしただけであって…お互いが思い合ってるとは限らないから。
今夜だけと割りきっていたのに。
「ナナシ」
「獅郎…?」
「愛してるぜ?」
「っ!?」
割りきっていたのに…。
こじ開けて私の心に侵入して踏み荒らすなよ。馬鹿獅郎。
私も好きだ馬鹿。
絶対言ってやんないけど。
end