憂いが混ざる空の果て

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「"不浄王"は腐の王が四匹従えるペットのうちの一匹。頭脳こそないが物質界に与える被害は天災クラスになるだろう。人間が蟻のように群がったところで果たして倒せるものかね…ククク…いよいよ雲行きも怪しくなってきたな」


「兄上、名無しが悪魔落ちと戦闘しちゃいました。任務は不浄王なのに…」


「アマイモンか…。あぁ知っている。見ていたからな」


「よいのですか?」


「あぁ」


「では、ボクも…」


「貴様も私と一緒にここから見学だ」


「うぇ…何故ですか?」



それは名無しさんの実体を確かめるためでしょうかね。

突然アマイモンが拾ってきた女、名は名無しさん。

こちらの世界に来る前にあの藤本に会っていたのに驚きだ。
死んでしまっているのだから藤本に聞こうにも聞けない。

本当に異世界から来たと?

信じなかったが暫く経てば信じるしかなくなった。

なぜなら、彼女の中に2つ厳密に言えば2人いたから。

どう考えたっておかしい。



「こちらに来たのは勉強のため…ね」


「兄上?」


「いや、」



そう、こちらに来たのは勉強のため。そう言ったがなんの勉強をしに来たのか。

それは、彼女が2人いるのと深く関係しているように思える。


普通人間1人に命は1つ。そう、魂は1つしか存在してはいけない。
だが彼女にはそれが2つ存在しているのだ。

簡単に考えればあちらの魂、と言うことになる。


なら何故あちらの魂をそのまま使わず新しい魂を使った。

私はこう考える。

使えない状況になったか、使えない状況にしてしまったから。

それは彼女が望んでそうしたからなのかはたまたそうせざるおえなくなったからか。


此方の魂はとても強く祓魔師の才能に溢れた魂だ。

だか、もう1つはどうだ。酷く脆いではないか。触れば壊れてしまいそうな、例えるならシャボン玉のような。

一見美しいのに中身は何もなくてただ風に乗るしかない。最後は呆気なく割れて跡形もなくなる。
そんな魂なのだ。


まるで正反対だ。


だが、どちらも確実に名無しさんの魂なのだ。



「不思議なものだな…この戦いで名無しさんの魂の有り様の正体が分かるかもしれないな…。奥村先生、あなたも…」


「名無しは人間じゃないってことですか?」


「いや、アレは人間だ。少し特殊な魂の持ち主なのだ」


「ふーん…魂…」


「シャボン玉はどうなってしまうのでしょうね?」



この戦いで儚く散ってしまうか?それとも此方の魂のように強くなるか?

どちらに転がろうとも私には楽しい喜劇にしか見えませんがねぇ。

この戦い。


新しいなにかが見つけられるといいですね?


名無しさん…













end
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