憂いが混ざる空の果て

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くっそう。

痛いじゃないか、体が全て痛いじゃないか。

そのくせ、なにか体が軽いじゃないか。


意味がわからない。



「名無しっ」


「うひゃぁ!?」



行きなり襖が開いてドーンと私になにかが当たる。

踏ん張ったけどダメだった。

勢いと共に私は後ろに倒れた。


「ったぁー」


「名無しっ」


「あ、アマイモンさん…?」



何故か抱き締められる形の私。
一度抱き締められたことはあった。しかし一体これはなんだ。
押し倒された状態だと!

藤堂の時には何も感じなかったぞ!?

しかしなんだ。この心臓のうるささは。

顔が赤くなっていくのがわかる。

さっきまで一番会いたいとか思ってたのに、この有り様だ。



「名無し。大丈夫ですか」


「アマイモンさんに心配された!?明日は槍ふるいだっ!!」


「ばか名無し。ボクは心配してはいけないんですか」


「いひゃい!!いひゃい!!ひゃなひてー!」


「なんででしょう。名無し。名無しを見ていたらホッとします。さっきまでイライラしてたのに」


「ふぇ?」


「こんな感じは初めてです。どうしてくれるんですか?」



押し倒されてた私の手をつかんで起き上がらせてくれたアマイモンさん。

お互い向き合うように座っている状態だ。



「アマイモンさん…」


「名無しはボクに会えてホッとしましたか?」


「そーですね。なんだか安心します」



あぁ、神父さん。

燐君や奥村先生じゃダメだ。


私はこのどうしようもない悪魔が


こんなにも

好きなんです。


顔を歪ませて私の肩をつかむアマイモンさん。

この温もりも匂いも全てが私を満たしてくれる。



「心配かけてすいません」


「本当です」


「もう、心配かけません。だから少し…抱き締めてください」


「名無しの癖にボクに命令ですか?偉くなりましたね。さすが名無しです」


「え。そんなムードだった?ふーんケチ!やならいいんですよーだ」



まったく。
好きだとおもった瞬間これだよ。
そっぽを向いて立ち上がる。

お風呂入りたいな。


すると、急に腕を引っ張られた。


「わっ!?」


「誰が嫌だと言いました?」


「アマイモン、さん?」


「名無しは黙っててください。黙らないと刻みます」


「えぇ!?」


「……心配、しま……した」



少しだけ冷たくされたと思うと次には溢れんばかりの想いをくれるアマイモンさん。

背中に回る腕は暖かくて。

そしたら自分が犯したことを色々思い出して。

強くなるって決めたのにアマイモンさんにすがり付いていたくなった。



「ふっ…うわぁ…う、……っふ…」


「名無し……」


「アマイモンさぁん……」


「……っ…」


「んふぅ…」






初めてしたキスは甘くて甘くてとろけてしまいそうなキスだった。










end

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