憂いが混ざる空の果て
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「アマイモン……さ、ん…」
「名無しさーん!!ご飯ですよ!!」
「いだだだ!!」
とってもいい雰囲気だった中で後ろの襖がスパーンと開く。
開いたと同時にまさかアマイモンさんに顔面鷲掴みにされるとは。
ギリギリ顔面に痛みを感じる。
だけど見えたんだ。
指の間から見えたアマイモンさんの顔が真っ赤だったのを。
なんだか私まで恥ずかしくなってきた。
「アマイモンどーしたんだ?あ、いりませんでした?名無しさん」
「い、いります食べます!!」
「ボクも食べます」
「では、私は隣の部屋で会議をしますので、くれぐれも静かにお願いしますね☆」
「「はーい」」
「では☆」
パタンと閉まる襖。
今までで貴方がこれほど憎いとは、兄上さんよ。
はぁーとため息をついて持ってきた食事を見る。
「美味しそう…」
「はい、美味しいですよ」
「早いですね」
私のとなりにピタリとくっつきながらモシャモシャ食べるアマイモンさん。
鷲掴みにしたくせに。
なんでこんなに憎めないんだろう。
もう一度言う鷲掴みにしたくせに。
「名無し卵ください」
「ヘ、ダメ!!私のだし巻きぃ!!」
「ボクのこの海老の尻尾あげます」
「いりませんから!!や、やめて!それは私のお味噌汁!!」
「大丈夫です。美味しいです」
「知ってます!!だから私のとらないで!!やめてぇ!?無理無理だめだから!!難易度高いよそれは、私の焼き魚!!私の至れり尽くせりぃ!!」
「モグモグ…美味しいです」
「酷い!!」
私もアマイモンさんの料理盗んでやる。
って、何一つないじゃないか!
くそう!!食べられてたまるか!!
私は料理をもって走り回る。走りながら食べるのは行儀が悪いけどしかたがない。
箸をもって追いかけてくるアマイモンさん。
私は死守してやる!!
「逃げ回りながら食べるとはさすが名無し。いろいろ図太いですね」
「う、うるさい!!」
「……名無し」
「うっ」
なんだその甘い声は。
腰が砕けそうになるだろう!!
後ろを向いてアマイモンさんを見上げればニヤリと笑うアマイモンさん。
そして
チュッ
「まっ………っ!?」
「ごちそうさまでした」
キスした。
こいつ、雰囲気もなにもない今キスした!!
唖然とした私は料理に気づかなかった。
「あ!」
「美味しかったですよ?」
「私の料理を!?」
全部食べた!!
「うわーん!!」
「はぁ…(愚弟め…)」
「あの、大丈夫なんですか?隣の部屋……」
「えぇ大丈夫ですよ☆」
「……では、私はこれで」
「オツカレサマでした☆」
ギャー
ギャー
うわーん!!
「おいメフィスト…。止めてやれ」
メフィストの雷が落ちるまであと5秒…。
end