憂いが混ざる空の果て

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「京都といえば!!金閣寺ぃー!!」

「分かりましたけど、名無しうるさいです」


「ひっど!まぁ、でもいいや!!綺麗だね〜」


「ボクにはあんまりよくわかりません」


「えぇ…綺麗じゃないですか。水面に反射する金閣寺!!」


「人間はよくわかりませんね。ボクのいとこは目玉が好きらしいです」


「えぇ!?今言う情報じゃないよ!?目玉って…怖っ」


「こう…グリッと」


「やめて!怖すぎますから!!」



なんだ、そのなにかをくり貫くような指の動きは!!

悪魔恐るべし。



「ははぁ…名無しの目玉綺麗ですね。喜ぶかもしれませんね?」


「にじり寄るなぁぁ!!」



目を両手で隠して逃げてやりましたともさ。
綺麗な金閣寺がひとつも見えないんですけどね。

仁義なき鬼ごっこを終えて私達は金閣寺内のベンチに座った。



「辛すぎる…体が痛すぎる…」


「所謂ババァですね」


「アマイモンさんも長生きしてるしジジィですけどね…いたたたた!!足足踏んでる!!」


「ジジィなんて心外だなぁーまだ物質界に来て1000年くらいですよ?」


「十分ジジィですよ!?」


「ボクがジジィなら兄上どうなるんですか」


「ご老人ですかね」


「兄上に言おう」


「やめて!」



なんでだろう京都なのにいつもと変わらない気がする。

よし、ここはアマイモンさんに京都のよさを教え込もう。

私は金閣寺のパンフレットに書かれた京都おすすめ観光地を見る。


「なにしてるんですか?」


「え、えと…観光地を探してましてて…」



顔近い!!

肩に顎をのせるな!!

くすぐったくなるだろう!!


恥ずかしいやら嬉しいやらで顔が真っ赤になる。

横を見れば整ったアマイモンさんの顔。
綺麗な唇。

私ってあの唇とキスしたんだよね…



「っ……///」


「どうしたんですか?顔真っ赤ですよ?」


「あ、ハハハ気のせいですよ!うん、うん」



今さら意識してどうする。

私はアマイモンさんを好きだと認めた。認めてしまったらなんだか些細なことにまで気がいってしまう。

これは、大変だ!!



「つつつぎ!スイーツ食べましょうか!」


「わーい」


「美味しいのは…わっ!!」


「ぱんふれっとはいらないです。片っ端から食べます」


「ぷっ…なら行きましょーか!!」

「はい」



アマイモンさんは私の手を握り走り出した。

けど私が追い付けるくらいのスピード。

手を握る力も優しくて、その温かさに心が擽られるように幸せになった。


意識してしまうのは仕方ないけど今はこの時間を楽しみたいな。

私はそっとアマイモンさんの手を握り返した。













end

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