憂いが混ざる空の果て
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私は話さないと仕方がないと結論着けてアマイモンさんと兄上さんに今までのなり行きを話した。
兄上さんは愉快愉快と言いたげに終始怪しい笑みを浮かべていた。
アマイモンさんは興味ないみたい。
「……では名無しさんは異世界から来た、と?」
「多分ですはい」
「ここの世界に来た理由を要約すると"前の世界で犯した罪の、事の重大さを学びなさい"と、そういうことですね。いやはや興味深い」
「面白がってますね、絶対」
「そんなことはないですよ!して、その話を貴女にした人物は誰ですか?」
足を優雅に組む兄上さん。
――――うわ、何そのズボン。タイツ?なにそれ?うわ、うわぁ…。
「えーと、黒くて長い服を着ていて、あ!なんだか神父のようでした」
「ほう…」
「髪が短くて眼鏡で優しそうな方でした」
「藤本神父(ヤツ)ですね、確実に。藤本も粋なプレゼントを寄越してくれますね…」
クツクツと私を見ながら怪しく笑う兄上さん。
嫌だなぁと横にいるアマイモンさんのほうを見る。
しかし真横にいたのは鎖に繋がれた先程の変な生き物。
舌を出しながらキラキラした目でこちらを見ている。
多分5秒は目を会わしてしまっていたと思う。
なんか犬みたいに尻尾ふってるなぁと頭を撫でてあげた。
「名無し、見えるんですか?」
「え?なにが」
「ベヒモスです」
「ベヒモスデス?なんですかそれ?お菓子ですか?」
「名無しさん。アマイモンの隣にいる鬼ですよ。鎖に繋がれた」
え!?今ゴブリンて言わなかった?え!?ゴブリンってあのゴブリン?え!?ベヒモスデスってゴブリン?
「ベヒモスデスじゃなくてベヒモス」
「名無しは頭が死んでますね」
「し、失敬な!」
「では、名無しさんこの黒いのは見えます?」
兄上さんが空気中の小さな黒い粒を握りしめる。
「花粉?私こっちにきて目がよくなったのかな?」
「顕微鏡クラスの目のよさですね。因みにこれは魍魎です。下級悪魔です」
「え?悪魔っていいました?アマイモンさんも地の王とか言ってましたけど。なんなんですか?あ、痛い子ですか…痛いっ!」
アマイモンさんの長い足が私の脛をクリーンヒット。
悶えていると兄上さんがまたクツクツと笑った。
「名無しさん。アマイモンは地の王を冠する権力者の1人ですよ」
「まままままじですか?」
「まじです」
もしかしたら私はとんでもない世界に来てしまったのかもしれない。
膝に乗るベヒモスを撫でながらあの神父さんを少し恨んだ。
end