憂いが混ざる空の果て
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「ホウ☆なかなか素早い動きですね」
「名無しの割には早いですね」
そういいつつ名無しさんを食い入るように見るアマイモンに苦笑いした。
―――相当入れ込んでいると見える
アマイモンにしては珍しい。名無しさんはそれほど内に力を秘めているのか…。
ニヤツく顔を私は必死に抑えた。
「どんどんでてくる!!」
キリがないとはこの事だ。
殺したぶん出てくる鬼。
一匹また一匹と増える鬼をどうにか止めることはできないか…。
その時ふと先日シャラさんと燐君とではなした内容を思い出した。
『名無し、お前は稀に見る洞察力と観察力の持ち主だ』
『やった!誉められた!!』
『お、俺は!?』
『お前は稀にみる御馬鹿だ』
『……』
『で、だ。実戦にはその洞察力と観察力を使って戦え。相手の次の一手を見極められれば強くなれる。そんで、名無しは体も胸も小さい』
『胸を、胸を言う必要は!?』
『ないかにゃ〜にゃははは!!』
『シュラさん!!』
『悪い悪い。その分小回りが効いて相手を錯乱させるのに長けてる。欠点は持久力のなさと力のなさだ。名無しはスピード重視で戦え。運動神経は良い方だからドジさえ踏まなけりゃ名無しは強くなれる。燐よりも強くなるかもにゃ〜』
『洞察力と観察力…スピード重視で…』
『くぅ〜名無しに負けてらんねー!!』
――――……
相手を錯乱させる。
そしてスピードと洞察力と観察力…。駆使すれば強くなれる。
私はそんな会話を思い出した。
観察力!!
自分ではよくわからないけど長けてる観察力を使って回りを見渡す。
鬼が出現している箇所は決まった箇所。あの壁の一角か…。
「よし!」
私は兄上さんの近くにある聖水を手にとってその箇所に投げつける。
すると一面に広がる聖水。それから鬼が増えることはなかった。
「あと…5匹!!」
上がりつつある息を整えて回りをみる。
大きいやつはいないね。
あとは大丈夫!!
私は重い矜羯羅の魔剣を振り上げた。
end