憂いが混ざる空の果て
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兄上さんはどうあっても放してくれないみたい。
だから諦めて話を聞こうと思ったんだけど、話にもついていけない。
私はひとつため息をついてしゃがむ。
「では健闘を祈ります☆」
「あ、おい!!」
「あり?」
急に腕に解放感。
見れば兄上さんはいなくなっている。
けど、さっきよりドスの効いた顔をしているシュラさん。
奥村先生はもういってしまってその場にはいなかった。
「名無しなんでいるんだ!?」
「えぇ!兄上さんが行けって…」
「お前はまだ経験が塾生の奴等より浅い。悪魔との戦闘もしてねーだろ?」
「あぁ、今朝しましたよ!鬼と戦いました!!」
「ことはそんなに小さいものじゃねーんだわかるか?」
「うぅ…」
なんだか居心地が悪くて顔を下げる。
もしかして今回は討伐に参加させてくれないなかな?
「……はぁ…名無しお前は頭はいい。自分の限界を感じたら逃げろ!!わかったか?」
「っ!はい!!」
「あと、もうひとつ頼みたいことがある…それは……」
「お!!いたのか…?いたよねこれだよね〜ちょっとそこの〜」
「名無しちゃん!?」
「アンタなんで!?」
「詳しいことは後々…んで、これはシュラさんからの伝言。"さっき炎を出した件で燐の処刑がきまった"」
「!!!!」
「んで、勝呂君。勝呂竜士くーん」
「お、俺や」
「君にこれを預ける。君のお父さんの手紙。不浄王を倒すのに大切なことが書いてあるみたい。私には読めないけど。シュラさんは騎士團の人だから表だって動けないらしい。私達に任せるって…だからこれ着て燐君助けに行くよ」
ザッと説明したけど皆顔がはっ?ってなってる。
そりゃそうだよかね。大半が私を知らないしいきなりそんなこと言われても混乱するだけだよね。
内心皆に謝りつつ返答を待つ。
「燐を助けよう!」
「しえみちゃん…」
「いや、助けたいのはやまやまやけど…それってヴァチカン敵に回すてことやで」
「……!!」
「確かにそうだけど…。君たちは少なくとも私より燐君と付き合い長いんじゃないの?ちょっとは燐君を助けたいと思わないの?」
「……」
「燐君は塾生のやつら守りたいから強くなりたいとかいって毎晩炎の操り方練習してたよ。ちょっとは燐君に答えてあげなよ」
私はピンク頭の彼にそう言ってポンチョを着る。
ヴァチカン敵にしようが魔神敵にしようが関係ないよ。
燐君は守るべき存在だ。
「奥村がおるのどこや。案内せい」
「っ!わかった!!」
勝呂君はポンチョを手にとって私についてきてくれた。
よし、燐君いまいくからね!
end