憂いが混ざる空の果て
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ガチャンと扉を開いて中にはいる。
中はネジなど機械の部品のやま。こりゃ裸足だと足痛いわな。
うんうんと頷きながら燐君を探す。
途方もないひろさ。矜羯羅の魔剣をしまって燐君を探すため辺りを見渡す。
「……しえ…て…れ!!」
小さくなにかが聞こえた。何を言っているかは定かではないが確かに燐君の声だった。
「燐君ー!」
「名無し……」
「燐君助けに来たぞ!シュラさんから大体は聞いた。あんまよくわかんなかったけど…早くでよ!」
「んで…よくわかんねーのに助けに来たんだよ…」
「……」
「くるな!」
燐君に近づこうとすれば急に大声をだす燐君。
気迫に圧されそうになるが気にせず歩く。
「……炎をちゃんと使いこなせる気がしない…今まで気合いで何とか乗りきろうっておもってたけど、それじゃダメみてーだ」
ポツリポツリゆっくりと話し出す燐君。
そして最後に間を開けてゆっくりと小さく呟く。
「俺はこのまま死んだ方がいいのかもしれない」
「っ!?燐君!!馬鹿か!簡単に死ぬとか言うな!」
「……お前にはわかんねーよ。わかんなくていいんだ」
その言葉に私はプツリとなにかが切れたのを感じた。
ザッと燐君に近づいた。
「おいっ!!こっちくんな…った!?」
そして力任せに平手打ちをした。地面に転がった燐君の胸ぐらをつかんで自分に引き寄せた。
「ってーな!?何すんだよ!」
「弱虫ヘタレ!!自分だけとか悲劇のヒロイン気取るのも止めろっ!!」
「もう帰れ!俺は化け物だ!!」
「っ!!」
つかんでいた胸ぐらを放してしまうほどに燐君から放たれた青い炎。
咄嗟に離れてしまったが青い炎は全然熱くなかった。
むしろあたたかく感じた。
「こんな俺を…」
「馬鹿だなぁ燐君は…」
静かに涙を流す燐君を私は抱き締めた。
ほらやっぱりあたっかいじゃん。
「ばっ!?名無しあぶねーから!!」
「誰が化け物だ。化け物はこんなにもあったかくない。こんなに優しい炎が化け物なはずないじゃんか…」
「名無し俺は…」
「燐君は化け物じゃない。皆より少し境遇はあれかもしれないけど…燐君は馬鹿で突っ走ってばっかで笑顔が誰よりも似合う人間だ」
「っ!!」
「だから、今は泣かない。泣くのは不浄王を倒した後。皆待ってるから…」
「俺を…怖くないのか?」
「当たり前じゃん。燐君は燐君だから」
肩に頭を埋める燐君。
肩に感じるのは燐君の涙のあたたかさ。
優しく頭を撫でてあげれば腰に回った腕に力が入る。
「名無しサンキュー…名無しってなんか姉貴って感じだよな!」
「うん。ここだけの話君らの4才年上だから」
「えぇ!?」
「さぁ…燐君行きますよ」
私はそっと燐君の手を握る。
確かに握り返された手。
「うぉぉぉぉぁぁあ!!」
やっぱりちっとも熱くない。
このこの優しさが詰まってる炎なんだな。
「うわっ!!奥村君!?」
うんうん燐君は皆に愛されてるね。
ほんわかするその光景を見ていたら急に体が後ろに引かれた。
「あれ?名無し?」
手を離された燐君も不思議に思ったのか辺りを見渡す。
あれ?私はここにいるのに気づいてない?
「名無し行きますよ…」
耳元で小さく声が聞こえた。
この声……。
でもなんで?
私を抱えて声の主は独居監房舎から飛び出した。
end