憂いが混ざる空の果て

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「はやっ!速い!」



お互いにあのポンチョをきているからか姿が見えない。

確かにあの声はアマイモンさんの声。


今まで肩に米俵のようにしか担がれたことはなかったのに今は姫抱きだ。

なんでだ!?



「アマイモンさんですよね?」


「あぁ…これを被っていると見えないんでしたね」



カサッと布が擦れた音。
見上げればポンチョの帽子を脱ぐアマイモンさんがいた。

てか、なんで京都にいるの?



「名無しなんでオクムラリンと手を繋いでいたんですか?」


「はい?」


「ボクが名無しを迎えに行ったとき名無しはオクムラリンと手を繋いでいました。なんでですか?」


「いたたたた!!」



肩に回る腕が力任せに肩を抱く。爪が食い込んで痛いんスけど!肩もミシミシいってるから!



「なんでですか?」


「なんで私が悪い事したみたいになってんだ!?いたたた!!」


「ボクは短気なので…あと10秒です」


「10秒後何されるの!?」



微かに殺気みたいなぴりぴりしたのを感じたので私は起きた出来事を全て話した。

話し終わると肩も解放される。


「では、名無しから繋いだんですね?」


「え?あ、まぁーそうなりますかね?」


「死んでください」


「え!?」



驚いているとアマイモンさんは「シュタ」と言って立ち止まる。
辺りは一面森のなか。
そして私が立つのは森のなかにある異質なソファー。

ピンク。あ、これ兄上さんのか。


「名無しさん来ましたか☆」

「うわ!?兄上さんいたんだ!!」


「失礼ですね。貴女にはあれが見えますかね?」


「あれ?」



未だにアマイモンさんは私を抱えている。

片腕をアマイモンさんの首にかけて目を凝らしてあれなるものを見る。

森からはみ出る異質な物体。
驚異的な早さで広がっている。


「あれが不浄王です。頑張ってくださいね☆」


「……」



あれを倒せと言うのか。

正に要塞ではないか…。


ブルリと体が震えるのがわかった。落ち着けと自分のからだを抱き締めた。



「名無しさんは経験が浅いので恐怖でしかないでしようね…候補生認定試験頑張ってくださいね☆」



これ程兄上さんが憎いと思ったのははじめてだ。

なんだ余裕綽々な笑みしやがって。

こっちは一大イベントで死ぬか生きるかなんだぞ!!



死ぬのを怖いと感じたのは初めてな気がした。















end

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