憂いが混ざる空の果て
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『貴様のその魔剣の炎を強化するのに真言を唱える。前衛は貴様やれ。あ、あとあいつに炎効くか判らないからな』
「さっきからテキトーすぎ!やれとかなんなんスかもう!!」
『オン・アミリタ…』
「始めた!?マイペース!」
矜羯羅の魔剣の炎が徐々に勢いを増す。
「一旦ここで死んでもらおう。はてさて人間一人灰にするのにどのくらいかかるのか、ちゃんと時間を計っておかなければね」
「っ!!」
「奥村先生!!」
青年に押し倒されている奥村先生。
飛び出して矜羯羅の魔剣を振り上げる。
しかし、攻撃を受ける前に青年は奥村先生から退く。
荒い呼吸を繰り返す奥村先生の背を手でさする。
「っ!!先生……大丈夫!?息できますか!?奥村先生!!」
「だ、大丈夫です…よ………なんだ…?」
「よかった…」
「その目君のものではないな」
奥村先生が放心している。
あまりに無防備な奥村先生のまえに私は立つ。
「先生になにしたのっ!!」
「おや、炎が灯ったのかい?可愛炎じゃないか」
「ば、馬鹿にするな!」
「それにしたって君随分と生に執着しているみたいだね?昔何かあったのかい?」
「なっなんで!?」
「勘だよ勘、うーん。例えば誰かを不本意で殺してしまったとか…亡くしてしまったとか。あと、自分を殺したとか」
「っ!?」
「君が生に対する執着が強いのに比例して死への恐怖が強いみたいだね」
「……」
「おや?違ったかい?"もう一つの君"はそう言っていると思ったんだがね」
何を言っているんだ?
もう一つの私ってなんだ?
私がこの世界に来たのに関係あるの?
私が生に対する執着が強い?なんでそんなことがわかるの。
あなた何者なの?
私は昔何をしたの?この世界に来た理由はなんだ?
「君も素質がありそうだ」
「なに?」
「悪魔落ちのさ」
「っ!?」
息を飲むほどの速さで迫る青年。咄嗟に前に出した腕に衝撃が走る。
「いっ!?」
「細いねすぐ折れてしまいそうだ」
ギリギリ締め上げる青年。
力が入らなくなって矜羯羅の魔剣を落としてしまう。
自由のきく左手で抵抗してみるがちっとも動かない。
「っ…はなしてっ………っ」
「君には聞きたいことが沢山あるんだよだか……ゴフッ!!」
青年の喉元にせまってきたのは錫杖。
放された衝撃に尻餅をつくと私をかばうように誰かが立ちはだかった。
end