兎novel
□113話の男の娘
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※113話ネタ
アストラル……
お前が消えて、俺、本当にどうにかなっちまいそうだった。
でも、俺にはまだ支えてくれる仲間がちゃんといて……だから、お前の託したこのナンバーズでちゃんとデュエルしようと思う。
「チビッコパパの3馬鹿息子がっ……可愛い顔して生意気な!」
ハートランドの罵声に「彼」が豹変したのは、一瞬の出来事だった。
「グハッ!」
「誰が馬鹿だって?」
遊馬の隣にいたはずのVの姿は消え、はっとしたときには鈍い音とハートランドの吐血音が聞こえた。
「口を慎めよ、この蠅野郎。誰に向かってそんなこと言えんだよ、あ"ぁ?」
Vがハートランドを踏みつけるたび、アニメでしか知らないような痛い音が鳴る。
「お……お許しを!あんっ!」
「キモい声出してんじゃねぇよ」
Vの蹴りは容赦ない。それにも関わらず、ハートランドの表情は恐ろしいほど明るい。
明るい?……いや、中学生の教育に悪いような表情、言ってしまえば「恍惚」の顔を彼は浮かべていた。
「はぁっ、はぁっ……この痛みがっ……逆にいいっ!」
荒い息を上げ、何か痛みとは別の感情で悶え苦しむハートランド。
そして、何とも楽しげにそれを足蹴にするV。
……
……
……そ、そ、そうだ、デュエル!
遊馬はカードを構え、蝉丸に視線を移す。
「!………」
この状況でやれると思うか?!
嫌な汗をかきつつもこちらを睨んでくる少年に対し、蝉丸は真っ青な顔で激しく首を振った。
彼も同じく困惑……というか、ドン引きしていた。
ハートランド、お前は本当に変態メガネだな。そっち系だとは思ってたが、まさかMも入ってたとは。
ツッコミたいのは山々だが、何分、日曜日のゴールデンタイムにこんな発言はしたくない。いや、むしろハートランド、お前が気持ち悪過ぎてそんな余裕もねぇ。
「V様!もっと……もっと痛ぶって!」
「ふざけるなよ、ウザいんだよ!下僕でもないくせに!」
「で……では!私を貴方様の……一生のしもべにして下さ……あぁっ!」
ぼんやりとそんなやり取りが聞こえてくる。
下僕【げぼく】
召使いの男、下男。
ー広辞苑ー
ツウっと遊馬の頬を一筋の涙が流れる。
俺、分かんねぇよ。
Vのキャラとか、ハートランドの趣味とか……もう何なんだよ。
ハートランドが万が一仲間になったら、俺……っつうか、俺もVにあんな風にされるとしたら……
「あ、あ……」
アストラルぅーーーーーーー!!!!!!
遊馬の悲痛がこだまする。
ー遊馬、大人になれば分かるよー
悟り切ったアストラルの声が、聞こえた気がした。
完。
……
……
……
「……何です、これ」
「いや、Vの様子を見て妄想してみた。ふぅ……久しぶりにいい仕事をしたな」
「V兄様、もっとマシなことして下さい」