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□必殺!三好三人日記
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我らは三好三人衆。松永軍の死神部隊と言われている。我らがお仕えするのは、大和を治める松永弾生久秀様。そしてその奥方であられるお艶の方様だ。(お艶様も戦にお出になられるから…まあ主君であることは変わらないのだが)ところで我ら三人は実は兄弟で私が兄の三好長逸。次男の岩成友通、三男の三好政康が現在の三好三人衆である。(そもそも三好三人衆とは肩書きのようなものだ)今日から我らの主君、松永様とお艶様について記していこうと思う。













卯月の十日、晴れ。長逸が担当する。桜が開きかけてきているこの季節。お艶様の体調が優れないらしく、松永様は執務を放り出してつきっきりだ。あの冷酷無慈悲である主があそこまで一人の女子に執着するとは。確かお艶様は主と共に自分の父親を手にかけた(というか毒殺?)したと聞いた。それ程主に心酔しているのだろう。だが……私がもしお艶様だったら…正直言ってあの主にはついていけそうにない。爆弾狂で神経質でちょっとヤバイ系なあの主には……ああ、失敬。お艶様は早く体を治して戦に出たいらしい。それを主はそっと諭して「卿は早く体を治すことだ」と一言。





卯月の十五日、曇り。今回は私、友通だ。お艶様の体はすっかり良くなって明日の戦のために備えている。ああ、今日もその猫のような大きな瞳が美しく輝いている。はっきり言って我が松永軍の紅一点なだけあって兵の中でもお艶様は慕われている。寡黙で無表情…だがそこがまたいい。あの主の奥方だけあってやはり肝が据わっているというべきか…どこか冷めているが、それが魅力を引き出している。ああ、そういえば明日は奥州へ行くようだ。なんでもまた主の気まぐれで西国にある宝を奪いに行くようだ。お艶様にとって主が欲しいものは自分の欲しいもの。そんな規則的な気持ちがあるのか、お艶様はせっせと戦の準備を整えている。着物の下に鎖帷子を着け、帯の中には幾つもの爆薬や爆弾が仕込まれている(覗いたわけじゃない!侍女から聞いたのだ)。お艶様の愛用する長刀『平蜘蛛』もぴかぴかに磨かれている。名前からわかるように、その長刀は主の最も愛する宝『平蜘蛛茶釜』と同じ素材で作られた石と鉄の武器。刃の部分が真っ黒で珍しく、意外と切れ味もいいのだ。明日はそれを振るうお艶様が見れるのだろう。





卯月の十六日、晴れ。政康担当だ。主はまず初めに四国の長曾我部に攻め入った。そこでお艶様は大活躍だ。戦闘も素晴らしいが、何より敵兵を色気で落としている。その短い着物の裾からのぞく滑らかな白い足と、猫目にやられているな。ただし、こちらの兵もやられているが。主はそれを評価してはいたが、「…後で私と二人きりになろう」と低い声で言っていたのが気になる。
そしてお艶様が主に持ってきたのは装飾が施された南蛮の布だ。いん…ど…とか言ったか?そこの布で、我が国ではとても作れないようなもの。主はとても気に入って、「これで卿の着物を作ろう。ああ、そうだ髪飾りもつけて…よし、次は髪飾りだ」。つまり、ここ最近主の興味があった品は全てお艶様のためだったというわけだ。





卯月の二十日。雨。主は毛利を攻めた。毛利が持っている紅桜と真鍮の簪を手に入れるためだという。何故あの智将がそんなものを持っているか気になってたずねれば、「どうせあの霊媒師の妻にでもやるつもりだったんだろう。あんな薄気味悪い女子よりも、艶の方が似合うだろう?」と言われた。…どこまでもお艶様一筋の方だ。確か毛利の正室は霊能力者だったな。





卯月の二十五日。主が忍を雇った。腕利きで伝説の忍だとか。風魔というその忍は主の役に立つらしい。ところが、お艶様はその忍を怪しんでいるらしい。顔を見せず、金次第であらゆる大名に雇われる忍…確かに怪しいが主はただ笑っている。「あんな者、久秀様のお役に立つのですか」とお艶様が仰れば、主は「ああ、仕事はきっちりこなすと聞いているよ…艶、嫉妬かね?」と返してお艶様の顔を真っ赤にさせた。
その忍の仕事はこの城に攻めいってくるであろう長曾我部の食い止めだ。この前の報復に来るのだろう。






卯月の二十七日。長曾我部軍が攻め込んできた。風魔は俊敏な動きで敵を翻弄し、始末していく。お艶様も可憐に舞い、二人がほとんど倒している。(もちろん我ら三好三人衆も活躍しているぞ!)主はお艶様を攻撃してきた敵しか倒していない。「艶、怪我はないかね」「ええ、ありがとうございます久秀様」と戦場でも甘い。我が軍の圧勝となった。








「……松永軍って平和だな」
「おい、また戦だそうだ」
「…来たか」
「ああ」
「仕方ない」
「鋭く、素早く終わらせる」
「それが情け」



必殺!三好三人日記
(久秀様、最近三人衆が日記を書いているらしいのですが)





■あとがき
やりたかった三好メイン話!


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