□「旦那様のキスはどんなキス?」
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夏も残り僅かといった頃、高杉さんから送られてきた
「夕涼みにでかけないか」という逢状
久しく逢っていなかった愛しい人に逢えるとあって
胸にじんわり感じる甘い重み
元気にしていただろうか、選んだ浴衣は気に入ってはくれるだろうか
足取りは軽く、あっという間に川床へ着き彼を探す
近くの女性達が一番奥の座敷に目線をやっているのに気づき見てみれば
足を崩して一人手酌をしていてる高杉さんの姿。

肌蹴た胸元から覗く、厚い胸板に
杯を煽るたび時折覗く、程よく筋肉質な腕
普段は鋭い眼差しも、今日ばかりは緩められ
何より、夕暮れによってキラキラと光る銀髪が
「キレイ」だと思った。

少しの間立ち尽くし見惚れていると、
こちらに気付いた高杉さんがニヤリと妖艶な笑みを投げかける。
その微笑に誘われるように高杉さんの元へと歩いていけば
より一層深められる口元の弧
胸の高鳴りは抑えることなど到底できず、
先ほどよりも速く、大きくなっていく

「久し振りだな、静香」

あまりにもドキドキしすぎたせいなのか、
緊張して声がでない。
なんとか振り絞った小さな声で「お久し振りです」そう呟き
すぐ横へとゆっくり腰を下ろせば、力強く引かれる腰
崩された足に倒れこむように手をつけば、目の前には
先ほど遠めに見ていた鍛えられた胸板
顔が、身体が熱を感じているのが分かり俯こうとすれば
伸びてきた指に顎を捕らえられ、顔を上に向かされる

「おいおい、久々に逢ったんだ。顔をよく見せろ」
「……っ」

無理やり上げられた目の前には、ぞくりとするほど美しい貴方の顔
形の良い唇は、相変わらず弧を描いたままで
可笑しそうに細められた瞳から、目が離せない

「お前は、本当にすぐ赤くなる」
「…高杉さんが…」
「俺が、そうさせているのか。」

瞳を軽く伏せ、無言の肯定をすれば
クッ、と笑いながら「ならば男冥利に尽きる」なんて。
本当に、悔しいくらいに格好良い

「だが、久々に見たお前も随分と良い女になった」
「また、そうやって…」
「俺は世辞だど言わない」

少しだけ真摯な声と瞳で
でもやっぱり口元はいつものまま

「お前よりも色気のある女は、ごまんといる」
「……」
「だが、お前より良い女は」

顎に添えられたままの指に、少しだけ力が加わる
鼻と鼻がぶつかる距離まで近づいて
もう一度、私を見つめて

「現われそうにないようだ」

少しだけ掠れた低い声に囁かれ、身体に熱が灯る
近づく距離に自然と目を瞑って、重なり合う唇
顎に添えられた指は、頬を通り顔のラインをなぞってうなじへと添えられる
腰を支えていた腕は、もっと近くにとでも言うように力を込められて

「はっ…」

漏れる息に、添えられた手に、回された腕に
密着させた身体に、身体の熱はあがるばかり
唇を舐め上げて、ゆっくりと丁寧に歯列をなぞって

「やはりお前は美しい」

その言葉を合図に深くなる口付け
舌と舌と絡ませて、甘い吐息を漏らして
周りに人がいることなんて忘れて、ただ貴方を感じるの

久々の逢瀬
いつもと変わらない貴方
それでも感じる口付けは
逢えなかった日々を埋めるような
いつもよりもちょっとだけ激しい甘いキス

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