一騎当千

□冷汗三斗
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翌日の放課後、ななこは同じく体育館にいた

練習が始まる前だということで紫原とななこは楽しそうに遊んでいた

赤司がやってくると、ななこはぶんぶんと腕を振ってニコリと笑った


幼馴染か・・・
妬かずにはいられない、それは自分でも否定しない赤司だった
しかし、素直にうれしそうに笑っているななこを見るとそんな気持ちはいつの間にか消えていった


練習も中盤に差し掛かったころ、赤司は約束通りタオルをかごに入れて運ぼうとしていた


『赤司くん!』


「ああ、ななこ」


赤司がかごを置くとななこはきれいなタオルを差し出した


『お疲れ様!』


「ありがとう」


赤司はタオルで汗をぬぐうと首にかけた


『手伝うよ』


「?僕がやるっていっただろう?」


『さすがにまだ飽きてない!三日坊主以下はごめんだから今日と明日は文句言わずにやる(笑)』


「ふっ・・・そうかありがとう、せめて手伝わせてもらうよ」


『ありがとう』


ななこと赤司はタオルの入ったかごを洗濯機のある所へ運ぶことになった


「まだ二日目だし、部員達にはなれてないかな?」


『いつもの皆なら慣れた…のかな』


「疑問形か?」


『いつも、ほとんど紫原君がいるからさ』


紫原と言われて赤司の心がすこし締め付けられた


『私さ、人見知り激しいんだ!』


「本当に?」


『みんなに初めて会ったときは、たしか私はキレてたからズバズバ話してたなぁ(笑)』


「あの時のきみは本当に怖かった(笑)」


『失礼な(笑)」


「でも…」


『でも?』


「でも、君がすごく優しいのがよくわかったよ。」


ハテナマーク浮かべているななこに赤司は付け足した


「あんなふうに助けてあげれるのは優しくて勇気のある証拠だよ。それに、君がすごく優しい目であの子たちを見送っていたのを知ってるんだ。」


微笑む赤司にななこも微笑みかえし


『ははッ!!気のせいっしょ(笑)』

と手を叩いて笑い飛ばした


そんなななこをらしいなと赤司は思いながら見つめた


『でさー、普段はっていうかたいていは大勢の前にたって何かしたり、目立つようなことしたり…マジで無理!!』


眉根を下げてはにかんだななこ


「恥ずかしいから…?」


『そうだなー、恥ずかしいから!似合わないでしょ?意外でしょ??』


ふざけた調子で言うななこだったがその表情はどこかさみしそうであった


『あ、でもこうやって二人きりとか少人数は平気!あと、むっくんみたいに慣れてる人いるともっと平気かな』


「そうか…」


またも紫原の名前を発せられて赤司は目の色を暗くした


そう言ってる間に洗濯機にタオルを入れ、洗剤を入れてななこはまわしだした


『赤司君、ありがとう』


「僕は何も…」


『なんだ、心配してくれてたんじゃないの?(笑)』


首をかしげて笑うななこ


「自意識過剰だよ(笑)」


赤司も冗談っぽくかえした


洗濯が終わるまでななこと赤司はベンチに腰を掛けて話していた


『赤司君はさー…』


「ん?」


『あー、やっぱ何でもないや!』


「そんなことないだろ?」


『そんなことある!』


「そうか」


『やっぱり…』


「ふふっ…」


『笑わないでよ(笑)』


「すまない、なんだい?」


『赤司君は、勉強もスポーツもできて、っていうか何でもできて、足りないものないよなーって』


「え?」


『気にしないで!』


「気になるだろ、そんなこと言われると」


『嘘つけ、そんなことみんな言ってることでしょ?』


「…」


『図星(笑)』


「ななこに言われると気になる…君はそういうことを考えなさそうだったからね」


『はは…たしかに私らしくないわ』


「どうかしたのか?」


『こうやって頑張ってるみんなの中に私みたいにがんばれない人が入っていいのかなって…』


「頑張れない?」


『ただの無精者だ!(笑)それよりさ!』


そんなことない、赤司は思ったが話したがらないのに無理強いすることはしたくないので追求しなかった


『私、ほんと大勢の前だとうまくやれないけど許してね』


悪戯っぽく笑うななこに赤司は頷いた


『こうやって平和なのが一番っすね〜』


冗談めかして言うななこの目は本当に幸せそうで赤司もなんだか心が温かくなるのを感じた


「ななこ…」


『なに?』


「ななこは、敦のこと、、、どう思ってるんだ?」


平静を装った赤司だったが噛みそうになっていた


『どうって言われてもー、幼馴染の仲良しで、むっくんいい人だしおもしろいなーって思うよ?』


「恋人…とかは…?」


『ぶっ…』


ななこは軽く噴出して目を見開いて赤司を見つめ、彼の目が本気なのを見て少し驚いた


『昨日も言ったけどそれはないな〜、たしかにむっくんはいい人だけど、そういうんじゃない…っていうか、恋人とかいなくても幸せだし♪独身貴族ってやつかな(笑)』


「ははっ…ななこは面白いね」


『あんがと(笑)』


「彼氏はいらない?」



『ん〜、いらないかな!ってかここだけの話、男の子とそういう関係になるのも恥ずかしい//』


赤くなりながらななこは困ったように言った


「男が怖い?」


『いや、違うよ。別に同性愛とかでもないからね!?』


赤司がゆっくり頷く


『恥ずかしいし…恋愛したことないからわかんないけど…やっぱ恥ずかしい//…と思う!』


納得したようにうなずくななこ



「好きな人に抱きしめられるのは恥ずかしいよりも幸せなことだと思うけどね?」


『そうだろうね〜、でもそういう人があいにくおらんのでなぁ〜(笑)ま、嫌いな人とかだったら恥ずかしいどころか恐怖だろうしね(笑)』


「それはそうだね(笑)」


『こうしてのほほんとしてんのがいいな〜って思うよ〜』


「君は本当に女子高生らしくないね(笑)」


『あら失礼だわ(笑)』


そういって立ち上がるとななこは洗濯物を干そうと赤司を促した
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