story

□やんわりとした春の夜のこと
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やんわりとした夜

とろけてゆきそうな目と脳

明日も早いな、なんて思いながら君の肩に頭を寄せて、うとうとと映画をみる。

「眠い?ベッド行こうか?」
「んーん…、まだいい…」
もう少しこのままがいい
ぼんやりしていてあたたかい、この感覚に浸っていたい。

最近また忙しくなってきたから、君とこうしていられるこの時間をもう少しだけ…




重なっている君の手に少しだけ力を入れて握った。

うとうと、深く沈むように目をつむっていると、ふわりと体が浮いた。
地から離れた感覚に
目をあけると君が私を抱えて寝室へ向かっていた。
「…寝てた…?」
「うん」
降りて歩こうとするとそのままでいい、と君はそのまま寝室まで運んでくれた。
ベッドにそっとおろされた体は
眠気で気だるく感じる。
横たわった私の頬を君が優しく触れる。まるで労っているような手つきだ。 
「…どうしたの…?」
かすれた小さな声で君に尋ねた。
「ん?」
「なんか…やさしいから…?なんとなく…」
「またよくがんばってるな、と思って」

ああ…心配してくれていたのか…

「大丈夫だよ。…ただ…最近あんまり会えなかったから…もう少しいっしょにいたい…」
君の隣にいたい。
なにかいっしょの事をするわけじゃなくても、ただそばにいたい。

まぶたはとんどん重くなる。
君はいまどんな顔をしてるんだろう。
わがままを言ってしまっただろうか
今日は君の家に泊まる予定はなかったのに



「いっしょにいるよ、ずっと、もっと、俺もそばにいたいよ。」
頭をなでる大きく温かな手のひらが心地いい、やわらかな声が降ってくる。




「…なぁ…いっしょに住もうか」





眠りに落ちてく意識のなかそんな言葉が聞こえた。
ぼんやりした頭でもその言葉ははっきりと脳に響いて鼻の奥をつんとさせた。

私は瞳をとじたまま小さな返事を返した。

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