なるとの世界で

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メタモンに店番を任せている間、他に何にもしてないわけじゃない。


「おー、今日も大量だねジグザグマ」


私自体は何にもしてないが。



えらいえらい、と頭をグリグリ撫でてやると狸みたいなずんぐりむっくりしたポケモン(ただし毛並みは随分荒々しい)、ジグザグマが嬉しそうに鳴いた。




ポケモンには特性というものがあり、ジグザグマの場合はものひろいという大変役に立つ習性がある。……ゲームではお世話にならなかったけど(いやだってジムリーダーフルボッコにしてたらすぐ金額カンストすんだもん)


ちなみにこのものひろい、木の葉の里でも素晴らしい働きをしてくれた。

…そりゃ、ポケモンと人間である私じゃ物事の考えが違うから拾ってくる物品はピンからキリまでだったけど…。もうガラス瓶のカケラとかはいいからね。怪我するし。



「…あ、ミカちゃーん!」


今日の収穫物を鞄におさめてサイズ的にも見た目的にも奇抜でなく、動物と判断できるジグザグマは戻さず一緒に通りを歩いていればブンブンと手を振るお姉さんに絡まれ……声をかけられた。


「ユリコさん…どうしました?」


ひょこひょこ寄ってけばマシンガントークが炸裂した。


「うふふ!ミカちゃんが見えたから声をかけちゃったわ!お昼は食べた?小腹はすかない?甘味なんてどう?……あ、もちろんサービスするから!」


これを一気である。口挟めん。

「いや、いつもサービスしてもらってますし…」


「なーに言ってるの!貴女は私の命の恩人なんだから甘味くらい奢らせなさい!!」


「恩人って……、」



そう、この命の恩人云々のエピソードも発端はジグザグマが拾ってきたあるものに関係している。



それは半年程前のこと、今日と同じようにジグザグマを放牧してある程度の時間が経って戻ってきた時、持っていたのがなんと指輪だった。しかも見た感じ安物じゃなく、三ヶ月分の給料で〜みたいな高価そうな代物。



いつもなら、ある程度の金品は普通に懐へとしまっていたがさすがに指輪はマズイ。あと多分だがこれ婚約指輪な気がする。シンプルで細身な見た目、でも所々細工が彫られていて小振りな宝石がキラキラしてる。ヤバイ…ヤバイ。マズイ。


盗んだと勘違いされる前に交番……じゃなかった警邏?に届けなければ…!


目的地への最短ルートを記憶からたたき出してダッシュしようとした時


「…っあの、すみません!小振りな宝石をつけた指輪っ…見ませんでしたか…?!」
「………あ、」
「…えっ?」


現れたのが指輪の持ち主であるユリコさんだった。



「…それにしても指輪を拾ったくらいで命の恩人っていうのは大袈裟なんじゃ…」

「あら、そんなことないわ。だって結婚目前で指輪を落とす女、彼はともかく彼の両親は早々に見限るもの」


だから警邏に届けられる前でよかったと、彼女は笑った。


「ほら、食べて食べてー。これ新作なのよ」

「…はぁ、じゃあイタダキマス」

「どうぞ!…あ、そっちの狸ちゃんも食べれそうなの出すわねー」


いそいそと奥へと引っ込む彼女をズズッと新作汁粉をすすりつつ見送る。

そんなことがあってからか、彼女は私を見掛ければお店へと引っ張りこみ奢ってくれる。大変懐的に優しいので甘えまくっているがこのまま肥えそうで怖い。


「ほう……やはり塩味がちょいと足りねぇかい」
「ゲッゲッゲゲッ」
「なるほど…ちげぇねえ」


奥にやっていた視線を少しずらすと店内カウンターで甘味屋店主とトトロみたいな体型をしているポケモン、ゲンガーが会話していた。

何故会話できる、という疑問は随分前に考えないことにした。
漢と漢は魂で会話できるとか何とか、聞いた気が……しないでもない。



ちなみにこの甘味屋店主はユリコさんのお父さんで頑固親父を体現したようなお人だ。
そしてゲンガーは私の影警護である。

言葉通りに、“影から”私を護衛してくれている。


この影警護、ちょっと商売の方で危ないことがあった為相手に悟らせることなく、且つ非常時に備えてひ弱な私を常に護ってもらう為のもので。大変心強い。


セ●ムなんて目じゃないぜ。


そんな私のセコ●は此処にくると店主にとられてしまう。どうやら主人より舌が肥えているゲンさんの批評が欲しいらしい。
…まあ、ゲンさんも試作品を食べれて嬉しそうだからいいのだけど。



「キャーッ、誰か捕まえてー!!」



甲高い悲鳴につられるまま顔を大通りへと向ければ走り去る男とその男に向かって手を伸ばす女の人。よく見れば走る男の手には不似合いな女物のバック。引ったくりか。


さて、位置確認をしようか。


ゲンさんは店内奥辺り、私とジグザグマは飲食を扱う甘味屋に毛が入るのは…と遠慮して縁台。そして調度こちらへと走ってくる引ったくり犯。
隣の可愛い狸はこっちを見てた。


「ジグザグマ、どろぼうからのたいあたり」



任せろ!と言わんばかりに鳴いたジグザグマには後でご褒美としてポフィンでもあげようか。






―――――――――
…あれ、書いたあとに何ですが警邏ってうちはファミリー担当でしたよね?

………うちはファミリー壊滅後もあるのかな。いやいや誰か違う人たちがやってるよね。うん←

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