なるとの世界で

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「ミカちゃーん朝だよー」

「ミカちゃーん忘れ物ないー?」

「ミカちゃーん」

「ミカちゃーん」

「ミカちゃーん」



…………お前はオカンか!



原因はわからないもののウチに逆トリップ(…いや、相手からしたら普通にトリップ)してきた猿飛佐助が居候して早くも二週間程経つが、彼はまごうことなくオカンである。フルパワーオカン。


ただしオカン…、


「朝食に毒を盛るのはやめてくれないかな」


「あはー、俺様何にも聞こえない」


そう、何故か彼私を毒殺しようとしているんである。なにそれ物騒。


でも最初こそ倒れて大変で鞄から引っ張りだしたどくけしを口ん中に突っ込んでくれたゲンさんに助けられたりしたが、ほとんど毎食混入されればさすがに耐性というものがつくもので、今や普通の毒なら気にせず食べれるくらいになった。
しかもちょっと毒が入っているのがどれかとかナチュラルにわかるようになった。複雑な気分だ。


そもそも毒物混入されてるなら食べないという選択肢を前までの私なら当たり前に選んでいた。


しかし、ふと考えた。


戦闘とかならまだしも他のことすらポケモンに頼りきりではやっぱり危ない、と。


だからこそアカデミーになんか通って基礎体力なんてつけているんだからこの際毒の耐性もつけようと。…本当に危なかったらどくけし使うというかゲンさんに無理矢理突っ込まれるからとりあえず私の人生終了というオチもないだろうし。


だから口ではこう言いながらも今はあんまり気にしていない。


………なんだか逞しくなったな。


現代人時代なら腹痛ですら泣き言言ってたのに…小指どこかにぶつけただけで痛い痛い言ってたのに……これも一種の成長ってやつか。



「上田ー、呼び出し」


そんな考えは扉近くにいたクラスメートの男子に呆気なく終了させられた。

というか呼び出しって…誰?


「だれー?」


「日向ネジ」


聞かなきゃよかった…!


というか行きたくない。
だけど「アンタ何処で知り合ったの!」という二週間前に佐助の時にされた質問責めの嵐再来の予感がバリバリするから此処に残りたくもない…!


……仕方ない腹を括るか。


「ミカ……後でキッチリ聞くからね」


聞こえない。私にはそんな言葉聞こえない。



廊下には髪がロングで白い目をした日向ネジがいた。そして私が来たことがわかれば顎をクイッとしてから歩きだす。


ついて来いってことだよね。

…ついて行かなきゃダメかな?………ダメか。


ついて来ない私に気づいたネジに視線で急かされ仕方なく後に続いた。




ついた先は校舎からはそこまで離れていないものの覗き見されることがないような奥まった場所だった。


しかし知ってるかいネジ?此処は世にいう告白スポットと呼ばれる場所なんだよ?


「此処に来た者の話は聞かない、そして他言しないという暗黙のルールがある」


突然そう言い出すネジにちょっと思考が追いつかなかったが…なるほど、ちゃんと此処がどういう場所か理解した上でチョイスしたらしい。


だが言いたい。あらぬ疑いがかかったらどうしてくれる。


「で、何か用ですかね先輩」


いや、まあわかってるけどね。


「依頼の方を…」
「はい、却下」


即答してから何故だ、という顔をするネジ。

というかやっぱりか。外れてほしいとは思っていたがそもそも依頼以外でネジが私にコンタクトをとってくる筈がなかった。



「何故だ…前は受けてくれただろう」

「前は前、今は今って奴です……というよりムリなんで」


そう、ムリなのだ。私だってちゃんと金を払ってくれる相手には誠心誠意お応えしたいところだがムリなものはどうしようもないのである。


「ムリだと…?」

「先輩もわかってたでしょ?ムリな理由もぶっちゃけ先輩のせいですしね」

「っ俺はただ、アイツと組み手がしたいだけ…」



「だから先輩がグングン伸びやがったせいでルカリオ身長足らないんですよ」


だって30pは差があるんだよ身長差。実践に役立てないでしょ。変な癖がついても困るからね。


依頼というのはポケモンを組み手の相手に、というレンタル的な?



私がアカデミーに通い始めるかないかくらいの時、たまたま会ってその時たまたまルカリオが隣にいて、そしてたまたま一人で修行していた為に組み手相手がいないネジ少年を不憫に思いちょっとした親切心で貸し出したらすごくよかったらしい。


最初はよかった、ルカリオの方が身長あったし。ただ、ネジ少年も人の子であり成長するもので、うん。いつの間にかルカリオの方が身長低い状態に。

それでもウチの子頑張ったんだよ。種族的には120pのところを130pまでにしたんだから!

……モーモーミルクを飲んで身長を伸ばそうとする涙ぐましい努力の前で、牛乳飲んでも身長は伸びないんだよなんて言えなかった。


「だが……そうしたら俺は誰と修行をすればいいんだ」


「いや、それを私に言われても」


確かにアカデミーじゃネジの相手になるレベルなんていないだろう、かといって現役忍者はそんなものに構っていられないくらい忙しい。



………いや、いるじゃないか。


ネジを相手にしても負けないくらいに(多分)強くて、今現在、此処では忍者業をしていないアカデミー生が。



「―――――――テンコ」

「あれ、気づいてたの?」


シュッと現れては隣に音もなく着地した橙色。やっぱりいたのか。


何となーく、ついて来てるだろうなと思って呼んだんだけど……教室にいる方が本体かね?



予想していた為冷静な私と違い、気配もなく現れた人物に戦闘態勢に入ろうとするネジにストップをかける。


「先輩先輩、彼が新しい組み手の相手ですよ」

「ちょっとミカちゃーん?俺様聞いてないんだけどそれ」

「……強いのか?」

「もちろん、保証しますよ」

「ちょっとォ!当事者を無視して話進めないでくんない!?」



うるさいな居候。






―――――――――――
…難産でした。最後なんかアレですしね。


組み手をするなら相手はルカリオ、って勝手なイメージがありましたがルカリオ裏拳とかできませんね。刺さる(笑)

多分技に“はっけい”があるからかなー。


パールでの手持ちメンバーです^^

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