聖帝学院
□新しい日常1
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「うるさいですね、僕は一人でいいんです。だから友達なんて必要ない!」
教室中に僕の声が響いた。
クラスメイトの目が僕に集まる。
我に返った。目の前で櫻波結が茫然としている。
僕は大声を出してしまった恥ずかしさとやるせなさで耐え切れなくなり、教室を飛び出した。
校舎から出た僕はしばらく歩いていた。
特にすることもなく、ただたださっきの出来事を思い出す。
僕があんな大声を出すなんて、初めてのことかもしれない。
それほど気に障ったのだ。
人の心にずけずけと踏み入ってくる、あの態度が気に食わない。
確かに、僕には友達がいない。ずっと孤立していた。小学生の時も、中学生の時も。
だが、それがどうしたというんだ、いつものことじゃないか。
孤独にはとっくに慣れたはずなのに、何故あれほど感情が高ぶったのだろう。
ふと視線を上げると、見知った人影が近づいてきた。
「み、美琴先輩!?」
どうして彼がここにいるのだろうか、授業はとっくに始まっているはずなのに。
「あー!いたいた!もう、何でこんなところにいるのー?」
「それはこっちの台詞ですよ、どうして美琴先輩がこんなところにいるんですか。授業はとっくに始まっていますよ?」
「んー、ぼく?ぼくはね、サボってる生徒がいないか、見廻りをしてたんだよー」
絶対嘘だ。いくら生徒会役委員だからといって、そんなことが許されるはずがない。
「わわっ、そんな目で見ないでよー、分かった、本当のこと話すからさっ!」
僕はどんな目をしていたのだろうか。
美琴先輩が話し始める。
「実はね、さっき織くんの教室に行ったら織くんがいないからさ、
どうしたのかなーって思ってたら、結くん…だっけ?が、さっき教室飛び出して行きましたよって教えてくれたんだ」
「彼が、ですか…?」
まさか、あの櫻波結が?
だってあいつは僕をからかっているだけなのに。心配なんてするはずがない。
「うん、それとね、『織に会ったら謝っておいてください』って言われたよ。何かあったの?」
美琴先輩に言われてドキッとした。
さっきの出来事がよみがえってくる。
「えっと…」
僕が口籠っていると、美琴先輩が言った。
「何かあったんだったら、解決してこなきゃ!ね、織くん?」
その通りだと思った。
いつまでもこのままでいるのは嫌だ。
けじめをつけなくては。
「すみません、美琴先輩。ちょっと話して来ます。ありがとうございました!」
「うんっ!頑張ってね!」
美琴先輩の声と共に、僕は教室に向かって駆け出した。