本章★ do or die..(長編)★

□The WORLD
1ページ/2ページ

世界-world-


何とも言えない悪夢を見た。
真っ暗な空間に、私一人。
何も見えない。何も聞こえなくて。
辺りを確かめようと両手を広げてみても、掴めるのはかすかな空気だけ。

私にはお似合いの世界よね。
冷静に夢の中で自分を皮肉めいた言葉で客観視してみたが、心の奥底では誰かがすすり泣いている。
誰?

嗚呼、私か。

そんなに泣いたって何にもならないよ。
だって知ってるもん。
誰も助けてくれないし、
誰も頼ってくれない。

一人で生きるしかないんだよ。

こんな世界もう嫌だ?
しにたい?

いやいや、思い出してよ。

手首切ってみたり、
ビルから落ちてみたり、
車に轢かれてみたり、
大量に睡眠薬飲んでみたり、
いろんな事試したけど




私しねないじゃん






ドクン、と一度心臓が跳ねる。
「・・・っ!!」
はっと目を開ける。
さっきのは夢だったんだと改めて実感する。
ぼやけていた目を数回瞬きさせ、私は両手を天高く伸ばした。
硬い地面に葉っぱをしいて寝てたから背中が痛い。
「ま、夢も現実もあんまり変わらないんだけど。」

一人ごとが寂しく響く。
「・・・・」
空は快晴。辺りはみたことのない木々が生い茂り、私は大きな木の根っこの間に出来た空洞に葉っぱを敷いて寝床にしている。
一通り辺りを探索してみたところ、ここは一日ぐらいで一周できる小さな島らしい。海を見渡してみたが、目を凝らしても凝らしても島らしいものも船も通らない。

ここに着いてからもう一週間か。

とりあえず映画みたいに木片を集めて海岸にHELPと書いてみたが、見つけて助けてくれる人なんているのかな。
「ハア・・・」
さて、これからどうしたらいいものか。ため息ばかり出て何もやる気が起きない。

ええと、何でこんなことになったんだっけ。







最近出来たという、世界で一番高いタワーに登ったんだっけ。
そんで警備員の目を盗んで非常口からそのタワーの一っ番高いところに登った。
本当すごい風で、目をあけて夜景を眺める余裕も気持ちもなかった。
ここから飛び降りたら、流石に跡形もなく消えれるかもしれない。
「君!戻ってきなさい!」
「家族が悲しむぞ!」
梯子をよじ登りながら足をガタガタさせて警備員が私を捕まえにくる。

「わたしは、もどらないっ!!」

風が哭く中声を張り上げた。

「こんな世界いらない!
私の望んだ世界じゃないの!」

乾き切った喉で見知らぬ警備員に私は叫んだ。
彼らは口々に上辺だけの慰めの言葉を投げかける。
私は彼らを遮って叫んだ。

「もういいの!

私は行くの!!

無限の彼方へ!!!」

風で飛ばされそうな体を支えていた両手を手すりから離す。
「ぁっ!!」という警備員たちの声も一瞬にして風にかき消された。
それからはよく覚えてない。

つんざくような轟音の中、私の体は天から地面へと急降下。
走馬灯さえ浮かんでこない程の速さで落ちて行く。
目をつぶってたのでどこで地面にぶつかるかわからない。

ピカッ・・・ピカ・・・

瞼の向こうで微かに光るものを感じた。
それがだんだん、だんだん、強く長く発光していく。

それは下で待ち受けていた警察のスポットライトなのか、ビルの照明なのか。
何にしても私にはどうでもよかったし、興味もなかった。


光が強くなるにつれて、その光が私を吸い込もうとする感覚を覚えた。
今まで感じたことがない、暖かくて自分が抱きしめられている感覚だった。

嗚呼、やっとさよならできるんだ・・・

私はその光に身を委ねた。






委ねた結果がこれ。
目を開けると私はどこかの無人島に一人いたのだ。

最初は天国かなとも思ったけどやけにリアルすぎる。
高層ビル建ちならぶ大都会にいたはずなのに今は一人孤島にぽつん。
はたまたこれが地獄というものなんか。
頬をつねって引っ張ってみたが、さらにここが現実だということを思い知らされただけだった。
何故孤島にいるのかという理由を、私の脳をフル回転して考えた結果、高い所から急降下したせいで時空と飛んで違う世界に飛んでしまったんだと考えた。
・・・なんか漫画みたいだ。
我ながら馬鹿げた発想。
でも自分の生活が嫌いで、住んでいる世界も大嫌いだった。
いっそ異世界に来たと思い込めば何か気が楽になった。

「神様も皮肉だ」
私は苦笑いをした。


幸い食物と水は豊富だし、今のところ何とか生きている。
顔も服もぼろぼろになっちゃったけど、とにかく都会の喧騒よりか今の状況の方が私にとってはとても楽で、気が付いたらもうここに来て一週間経っちゃった。。。
意外と自分がサバイバルに強いことに気づく。



「・・・!・・・・!」

私ははっとした。
微かだが海の方から人の声がした。
誰か叫んでいる。

私は立ち上がり、その声の方へかけ出した。
もちろん、片手に太い木の棒ともう片手に石を持って。
助けにきたと思って手ぶらで行って人さらいとか海賊とかだったら大変だ
きっともの珍しさに拘束され、売られるに決まってる。

ガサガサ・・・

声の主の方へ向かっている途中、草むらが不意に揺れた。
振り返ると草の間から真っ白な耳がチラチラ見えた。
「何だくまか。」

・・・くま??
一週間この島で暮らしていたけど、見た動物は草食系っぽい見たことない小動物ばかり。
くまを見たのは初めてだった。しかも白くまて。
二本足で器用に立って何かを探している。
はっと私は気づいてくまに向かって叫んだ。

「だめ!!
そっちはだめだよ!!!」

くまが進もうとした方角には深い崖があった。足を踏み外して落ちてしまえば一溜まりもない。
「え?」
くまは私に気づいてこちらを見た。
が、声をかけるのが遅かった。
くまは叫びながら崖下へ落ちて行った。
まずい!
私は一目散に踵を返し坂道を下り、崖下へ向かった。
間に合えばいいけど。

ってか、さっきのくま「え?」って言ってなかったっけ。
しかも落ちる時「うわああ」とかも叫んでたし。
バクバクいう心臓の音を聞きながら私は冷静に考えた。
とにかく私が行くまで持ちこたえていて欲しい。

「ハァ・・・ハァ・・・・いたっ!!!」

白い頭が岩と岩にチラと見えた。
私は駆け寄り
「大丈夫??生きてるっ?!」
「う・・・」
よかった、生きてる。
頭と背中を大分打ったみたい。周りの岩が真っ赤に染まってる。
あれ、このくま服着てる。野生じゃないのか。いや、野生じゃなくても服着るのはおかしいだろ。
私は首をブルブルと振った。
そんなこと考えている場合じゃない。
今は助けなければ。

生き絶え絶えになったくまに自分の両手を心に押し当てる。
波打つ自分の息を深呼吸で整える。



「"LIFE"!!」


両手から湯気のような白いものが放出し出した。
それはやがてくまの体に浸透していく。
ドクドクと頭や背中の傷口から流れていた血がだんだん止まって行く。
私はいっそう両手に力を込めた。

「ハァ・・・」

悲痛に苦しんでいたくまがやがて穏やかな顔いなっていく。意識はないが呼吸は先ほどより穏やかだ。

「・・・よかった・・・」


私は両手をくまから離してその場にへたり込んだ。
力を使いすぎた。脱力感が半端ない。
「おーい!」
海の方角から数人の男の声が聞こえた。
私はとっさにくまの倒れている後ろの大きな岩影に隠れた。
「まったく、ベポのやつどこにいったんだ」
「キャプテンが欲しい薬草見つけたらすぐに出るぞって言ってたのに」
「かわいいメスグマでも見つけて追っかけたんじゃね?」
「「ありえる!」」
男たちはどっと笑った。

「このくまを探してたんだ。ってことはあの人たち仲間なんだ」
だが男たちは違う方向へと向かっているようだ。
この子見つけてくれなきゃ、そのまま置き去りにされてしまう。
私は右手に持っていた石を天高く投げて、すぐに岩影に隠れた。

ドコッ・・・

鈍い音が響いた。
「いてー!!!!」
運悪く一人の男の頭に当たってしまったようだ。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ