本章★ do or die..(長編)★

□The WORLD
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World -2-

やばい。
当たってしまった。
私は両手で顔を覆った。

幸いにも男たちは石が投げられた方角に向いてくれた。
あとはくまを見つけて貰えたらいい。

「おい! あれ!」
「「ベポ!!!」」

ベポ、と呼ばれていたくまが倒れている事に気づいた男たちが駆け寄ってきた。
よかった気づいてくれて。これで連れて帰ってくれるね。
「なんだこの大量の血は!
おい、ベポ、しっかりしろ!」
「服にも大量についてるようだが、全然傷だらけじゃねえな。
何があったんだ」
キャスケット帽とキャップを被った男がベポを抱えながら口々に疑問を漏らす。
確かに傷口一つないのに辺り一面血だらけだったら不思議でしょうがないよね。
「とにかく、ペンギン、キャプテン呼んで来い!」
ペンギンと呼ばれた男は大きくうなづいて走って行った。

さて、、ここから私はどう出るか。
今でたら絶対何でここにいるんだと聞かれるし、出なければまた一人助けがくるのを待たなければならない。
ズキ、と胸が居たんだ。
助けを待つ、って誰が私なんか助けてくれるんだろう。
私は両手を強く握りしめた。

ブォン・・・
鈍い重低音が岩の向こうで響いた。

「ベポの様子は?」

あれ、違う声がする。今までいたのかな。確かに二人だった気がするんだけど。。

「キャプテン!」

岩影からそろりと目を出して見た。
大きな刀を肩に担いだ長身男。顔は帽子で見えない。
ベポを抱える両腕には太い血管の上にタトゥーが彫られていた。

やっぱりさっき居なかった人だ。
「・・・!」
男が急に首をあげたもんだから私はとっさにまた岩影に隠れた。
危ない、危ない。

「俺たちがきた時はすでにベポは倒れてたんすよ。
意識ないみたいだし、怪我でもしてるのかと体見てみたんすけど傷一つ付いてないし」
男が状況を説明すると、さっきのキャプテンと呼ばれたブチ柄帽を被った男が
ベポを地面に置いてスラリと立ち上がった。
「そうか・・・」
そして岩に向かって話しかけた。

「で、そこにいるお前は誰だ」

びくぅっ!!
と体が跳ね上がった。
やばいばれている。
ここは気付かないふりをして出ていかないか、出て行くか。。

ボコォ!!

「ひゃっ!」

頭上を風が吹き抜けたかと思うと、隠れていた岩が横に真っ二つに割れた。
いや割れたというか、切られた。
やばい、岩が落ちてくる!

私はそれを避けようと横に転がった。
ズドォ・・・ン
岩には重い音をたてて私の真横に落ちた。
砂埃の中、私は男の真正面に転がったことに気づいた。

「・・・・・」
「・・・・・」

帽子の下で金色にも近い目が私を捉える。
スラリ抜かれた剣は怪しい光を放っており、いっそうこの男の威圧感を倍増させる。

「お前、何者だ。
ここで何をしていた。」

私は生唾を呑んだ。
刀なんて初めてみたし、さっき岩を切ったのもきっとコイツだ。
すごい、何か漫画みたい・・・。
私はその場で唖然としてしまった。

「返答なしか。
生憎俺は短気だ。返答次第ではバラす。」

バラす?
体をバラバラにするってこと?
なんかヤクザみたいだな。
私はコンクリート詰めにされて海にでも投げられるのかしら。

「ええと、
ただの通りすがりです!」

じゃ、と私は踵を返して森へ逃げようとした。
こんな目つきの悪い刀野郎がいい人なわけない。
次の船を待とう。

「"ROOM"」

薄い膜が私の体を通り抜けた。
男は長い刀を振り下ろすと、膜の中にあった岩や木や、私の持ってた木の棒まで切り刻んだ。

「・・・・え!?」
「・・・・・・!」

「・・・・・???」
私自身切られたかとおもったが、ぐちゃぐちゃになったのはあたりの物だけだった。
正面を向き直ると、二人ともびっくりした顔でこちらを見ていた。

再び刀を振りかざす。
だが風がくるだけで何も起こらない。
お互い何が起こっているのかわからず立ち尽くす。

「"タクト"!」

男は右手を私に向けて言い放った。
辺りの持ち上がりそうもない岩々がフワリと浮いた。すごいっ、何で浮いてるんだろ?
・・・・手品か??
「・・・・・」
「・・・・・」
しかし何も起こらない。
何してんだろ。タク・・・ってなんだろ。
私がポカンとしていると、
刀野郎の後ろで始終見ていた男がわなわなと震えだした。
「キャ・・・・キャプテンの能力が効かない・・・・!!!」
能力?
さっきの手品みたいなのがか。
確かに私は無傷だ。本来なら隣の岩のようにズタズタにされているものなのか?
よくわからないが、逃げるなら今のうちだ。
私は一歩左足を後ろに下げた。
「お前、何者だ」
キャプテンと呼ばれた刀野郎は長身とも思えない身軽さで私との間合いを詰めた。
はやいっ。全然見えない。

ガッ

男が私の右手を掴んだ。
「っ、・・・だめ!!!
触っちゃ、だめー!!!」
私は目をつぶりながら叫んだ。
私を触った人間は、生気を吸い取ってしまう。触れたら最期、この男の命はない。
「ダメーーーーー・・・!!
・・・・・ぇえ?」
男の叫び声がしないので恐る恐る目を開ける。
「・・・・うるせぇ」
うざったぞうに目を細める。
あれ?何も起こらない。
またお互いにポカンとして、変な間が空いた。


「・・・キャプテン・・・」


はっと声の主の方を向くと、ベポと呼ばれたくまが上半身を起こそうとしていた時だった。
「彼女は敵じゃないです。
俺を助けてくれた。
だって、、」

だめ、それ以上言っちゃダメ。
私の目は悲痛に訴えた。

「彼女が俺の傷を治してくれたんだから」

ああ、言ってしまった。
男たちが目を見開く。
気持ち悪がられるだろうなぁ。
もしくは売りとばされたりして見せ物小屋にでも置かれてしまうのだろうか。

「お前、能力者か。」

能力者、といえばそうなるのかな。
こんなこと出来るの私ぐらいだし。

「・・・・」

私は無言でうなづいた。
それを見ると男はニヤリと怪しげに笑い、刀を鞘におさめた。
いつのまにか周りを覆っていた薄い膜も消えていた。

「シャチ、こいつを船に連れてけ」
「ぇ、乗せるんですか?!」
アア、と怪しげな笑みを浮かべて言い放った。
「ちょ、、ちょっと待ってください!
船って、私を売り飛ばす気ですか!」
この男の行動からして助けてくれるという考えはすでに吹き飛んでいた。
「海岸に"HELP"と書いたのはお前だろう。
次の船が来ると期待しているんなら無駄だ。何十年先とこねえぞ。
だから乗っけてやる。
そうだな、お前の行動によっちゃあ売り飛ばすのも考えないでやる」

コェエー、この男コエー!
内心ビクついていたが、何十年も船が来ないんじゃ乗るべきよね。
泥舟かもしれないけど、このままも一人も嫌だ。
行動によっちゃあってことは、イイコにしていれば大丈夫ってことだろう。私得意よ、イイコにするの。

「わかった。


行く。」

私はたちあがった。

「俺、ベポ」
くまがキャスケット帽を被った男の肩に支えられながら言った。
「んでこいつがシャチ」
シャチ、、、すごい名前だな。親は悩まなかったのか??
「よ、よろしくお願いします。
私は、ショーです。」
二人ともよろしくーと返してくれた。
私は歩きながら、一番先頭を行く彼に目をやった。

「あれが俺らがキャプテン、トラファルガー=ローだよ」

「トラファルガー・・・」
イギリスの広場の名前も同じ名前だったな。映画で見た気がする。
「キャプテン、無愛想だけどいいやつなんだよ!」
二人とも生き生きとしている。とりあえず船に乗せてくれるってことは助けてくれるってことなのかな。
いやいや。
私は首を横に振った。まだ信頼できない。
信頼したところで、売られるかもしれない。それこそバラバラにされて臓器売られるかも!
想像しただけで身震いがした。
「ショーちゃん??」
「んぁ、ごめんごめん!」
私は二人の後を追いかけた。


海につくと、今までなかった黄色い潜水艇が停泊していた。
甲板には5,6人の男たちが出航の準備をしていた。
「ぉ、キャプテーン!ベポ大丈夫だったんですかい??」
「アァ」
男たちがこちらに気づいた。いかにも物珍しそうな顔でジロジロ見ている。視線がいたい。
何?何だろ??

「こいつも連れて行く」

目を見開く男たち。しばらく固まってたけど、お互い目を合わせて
「「「女だー!!!」」」」
まるでメシだと言わんばかりの歓声。
ちょ、マジでここ乗るの?
身の危険を感じざる負えないんですけどっ!!!
私は自分の両腕をさすってその場で固まってしまった。

「お前らなぁ・・・。
おい、こいつに一本でも指触れてみろ。全員五体満足で航海できると思うなよ」

「「「・・・・・」」」

一斉に男たちが黙り込む。
一応、かばってくれたのかな。
まぁ、私に触れると皆死んでしまうんだけどな。
ぁ、我ながらすごい自虐。

「おい」
「おいじゃないです。私はショーです!」
キャプテンと呼ばれた男は舌打ちした。
「なんでもいい。お前シャワー浴びてこい。色気の欠片もねえぞ。」
失礼な!・・・まあ確かに一週間もお風呂入ってなかったし、服も顔もぼろぼろだけど。。。
「ベポ、コイツに着替えをかしてやれ。」
「アイアイ、キャプテン!」
そういうと男はすたすたと奥に消えてしまった。

嗚呼、先行きが不安。。

それに、私の能力、彼に効かなかった。
彼も何かしようとしてたみたいだけど、効かなかった。

何年も感じていなかった人の感触に、まだ右手がジンジンしている。
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